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「納得できる仕事、納得できる生き方」とは

2013年6月17日

【禅のことば】梅雨になると思い出すこと

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 梅雨の季節になりました。

 この「梅雨」という名称ですが、語源としては諸説あり、定説を見ないようです。ところで、梅雨という言葉を見ると思い出す話があります。

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 5月25日、梅雨の雨が霖霖と降り続き、草の屋根からは雨漏りしてしまった。山僧(=私)が僧堂に入って坐禅すると、照堂と雲堂という、2つの建物の軒先で、雨漏りが起き、騒動となってしまった。修行僧たちは、進む者、退く者、間で立ち尽くす者と様々であった。そこで、私は、直歳(しっすい)という役目の僧に告げると、慧運(えうん)という直歳は法衣を脱いで笠もかぶらず、大工と同じように屋上に上って修理した。雨脚が額に降り注いでも、その仕事を嫌う様子はなかった。私は、ひそかに感じ入って、思いを起こして、一句を与えようと思った。…(以下略)
――『永平広録』巻8-法語6、訳は筆者

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 これは、後に越前(福井県)に永平寺を開かれる道元禅師が、まだ京都の興聖寺にいた頃のお話です。5月25日というと、今どきの季節でいえば、6月中旬から下旬になるでしょうか。ちょうど今頃です。京都では激しく雨が降り、そのため屋根が壊れてしまったようなのです。そこで、直歳という役目の僧侶に、修理を依頼しました。直歳は、寺院の建物の修理や寺院の警備、面白いところでは、当時の時間を定めていた漏刻(水時計)の管理などをしていました。

 興聖寺では慧運という僧侶に直歳を任せていました。慧運は、出家した僧侶でしたが、工事などが好きだったようで、興聖寺の建物のいくつかは、彼の力によってできたともされています。そして、その技能を生かして、梅雨時の雨による突然の屋根の破損にも機敏に対応したようなのです。

 雨が降ろうが、自分が濡れようが、好きな大工仕事を完璧に行う、ここに職人気質を見ることができます。最近では、職人気質という言葉も、どこか遠く聞こえるものになってしまったのかもしれませんが、やはり、自らの仕事をなし遂げるにはこの気質を持ちたいものです。職人気質とは、自分の技能を信じて誇りを持ち、その成果に納得できるまで念入りに仕事をする実直な性質だとされています。

 とすると、限られた時間や予算、人員の中で粛々と仕事をこなすことを求められる現代の職場では、あまり適さないのかもしれません。でも、こういう働き方って、もうできないのでしょうか? 自分の技能に誇りを持ち、成果に納得できるまで働くということです。いや、働き方に限らないことかもしれません。我々の生き方だって、自分が本当に納得できる生き方って、できないのでしょうか。

 そのためには、通常の成果などを求める生き方を諦め、自分の本来の在り方を見通す必要があるように思います。最近、坐禅がブームになっていて、坐禅会には多くの人、それこそ年齢・性別・職業などを問わず、足を運ぶ方がたくさんいらっしゃいます。そこには、本当に自分で納得のできる生き方を求める人が多いということなのかもしれません。

書:菅野惠然氏(茅ケ崎芙蓉庵/神奈川県茅ケ崎市)

 ところで、最後になりますが、道元禅師が慧運という僧侶に与えた一句は次のようなものでした。

  動けば必ず百当し、作さば必ず十成す
  (動けば必ず道理にかない、なせば必ず完璧に完成させる)

 これぞまさしく、納得のできる生き方ということなのかもしれません。人生を完璧に完成させるのに必要なことは?…やはり、自己をよくよく見通すことしかないと思うのです。

(菅原研州)

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Profile
曹洞宗の研究機関で活躍する若手・中堅僧侶4人。
宇野全智(うの・ぜんち)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。山形県大石田町地福寺副住職
上月泰龍(こうづき・たいりゅう)/ 曹洞宗総合研究センター教化研修部門研究生。三重県鈴鹿市泰応寺副住職
菅原研州(すがわら・けんしゅう)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。宮城県栗原市城国寺副住職
関水博道(せきみず・はくどう)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。神奈川県横浜市東泉寺副住職

*4人の詳しいプロフィールは⇒こちら
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