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「JAPAN」を世界に届けようとする迫力

2013年1月28日

『SALAD 英語版』村田吉弘

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『SALAD 英語版』
 村田吉弘

 柴田書店/5775円
 ■ アマゾンで購入する

著者は、ミシュラン関西版の初回から4年連続で最高ランクの三つ星を獲得し続けている和食料亭「菊乃井」の三代目主人であり、世界に向けて和食を意欲的に発信し続けている料理人。和食の一品は西洋のメイン料理とは趣が異なるとして「一皿料理はサラダの一種」というコンセプトで、四季折々の料理を具体的な調理法とともに紹介。単なる英訳にとどまらず、海外読者を強く意識したビジュアルの力も強く、アートでありながら実用的でもある料理本。


 書店で、パッと目を引いたのが『SALAD 英語版』でした。表紙のインパクトが非常に強くて、アップで撮られたお料理のダイナミックさは外国のアート写真集みたいです。とにかく、写真がきれい。六本木ライブラリーでは、書籍の販売もしているのですが、展示しておいたらすぐに売れてしまいました。こういう、自分では探さないような本のほうがけっこう売れていくんですよね。

 第一印象は、写真の鮮やかさが素晴らしく、編集も非常に手がかかっているなと感じました。レシピひとつひとつに工夫が感じられますし、名店「菊乃井」の看板を背負っているだけにおいしくないわけがありません。写真も丁寧に撮られていますし、季節ごとのお料理写真をコラージュしたページには夏は金魚など絵も添えてあります。四季があるという、日本料理っぽさをきちんと出していますよね。世界でもここまでお料理で四季を表現しているのは、和食だけなので、色鮮やかなお料理の写真だけで「いま何月」というのがわかるような気がするところがすごいです。

 だけど和食だからといって、お弁当の本などにしないで誰でも入りやすい「サラダ」をテーマにしているのも考えてあるなと思いました。世界規模でより多くの人にわかってもらいやすいように、日本食をモディファイしてあるような形です。京都の有名料亭の職人が世界に和食を訴えるために英語でこういう本を出したという、その事実だけで価値があるんじゃないでしょうか。表紙に「JAPAN」の文字が入っていないので日本食に興味がない人にもアピールできますし、外国の人が「たまにはジャパニーズサラダでも」と気軽に和食の世界に足を踏み入れられるのも珍しいですし、こういう本はもっと出版されていいと思います。

 英語版よりも先に日本語版も出ていますが、イメージが全然違うんですよね。どちらも同じ写真を使っていて、本の大きさも写真のトリミングもほんの一回り違うだけなんですけど。日本語版がごく普通のおとなしい料理本なのに対して、英語版のほうは迫ってくるものを感じます。お料理の写真をそこまでアップにしている本をあまり見ないということもあるでしょうけど、英語版にはとても外国っぽさを感じます。コントラストだけでここまでイメージが変わるのかと、両方を並べて見たときに驚きました。この違いを出した人はすごいと思います。日本を世界に広めようという気迫が、英語版からは強力に伝わってくるんですよね。あまりの迫力に、思わず「作ってみようかしら?」と思わされてしまいました。

 『SALAD 英語版』は、日本語の本を英語に直しただけにとどまらない、「和食を世界遺産に」という村田さんの活動と一緒に世界に出て行くためのものです。日本のものを英語にしている出版社はいろいろありますが、翻訳っぽすぎるか、はじめから外国目線すぎてしまうかのどちらかです。外国人好みの京都のお庭ばかり集めているような本には、日本人としてちょっとした違和感があります。その点でこの本には、トラディショナルな「JAPAN」を現在の形で世界に伝えようとする気迫があります。また、菊乃井できちんと修業した職人の技量も感じ取れます。本物の良さもわかりつつ、新しいイノベーションを起こしていることが伝わってきます。ここまで勢いのある本を作れるということが、村田さんがいかにインターナショナルな料理人であるかを物語っているような気もします。

 これはぜひ英語版を手に取って欲しい本です。日本語版にはない遊び心や余裕がありますし、写真のきれいさだけでも充分に素敵です。コーヒーテーブルに置いてインテリア代わりに使うというのでもいいのではないでしょうか。

構成/土田 みき

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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