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言葉の受け取り方、思い込みになってませんか

2013年2月25日

禅のことば「丙丁童子来求火(丙丁童子が来たりて火を求む)」

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 10世紀の中国でのお話です。

 法眼和尚という指導者の下で寺院運営の補佐をしていた玄則和尚という人がいました。

 ある時、法眼和尚が玄則和尚に、「そなたは、まだ仏法を究めてはいないようだが、なぜ私のところに質問に来ないのか?」と問い質しました。

 玄則和尚は、「あぁ、すみません。実はすでに、青峰和尚の下で、真の仏法に目覚めました」と答えました。

書:菅野惠然氏(茅ヶ崎芙蓉庵/神奈川県茅ヶ崎市)

 法眼和尚は、「ほぅ。それはどういう言葉で目覚めたのか?」と問いました。

 玄則和尚は、「丙丁童子来求火(びょうじょうどうじらいぐか。丙丁童子が来たりて火を求む)」です。

 法眼和尚は、「ふむ。それは良い言葉だ。だが、そなたは、この言葉の意味を理解していない」と断定しました。

 それを聞いた玄則和尚は、自分に自信があったので、法眼和尚の言葉に混乱し、そのお寺を出て行こうとしました。心の中では、「なんだよ、私はもう究めているのに、この分からず屋」とでも思っていたことでしょう。

 ところで、ここからが玄則和尚の良いところなのですが、そう思っている一方で、「ちょっと待てよ。この法眼和尚は、優れたお方だ。もしかすると、自分が間違っているかもしれない」と思えたのです。

 そして、法眼和尚の下に帰ると、先刻の非礼を詫び、改めて「修行者にとっての、真実の自己とは何ですか?」と尋ねました。

 すると、法眼和尚は一言、「丙丁童子来求火」と答えました。

 この一言で、玄則和尚は悟りを開くことができました。

 さて、この一段から知ることがあります。それは、同じ「丙丁童子来求火」という言葉が、一方では迷いの原因となり、一方では悟りのきっかけになったことです。

 この言葉の本来の意味ですが、「丙丁」はある方角を指す言葉で、中国の五行思想で「火」を意味し、「童子」というのはある種の「神」のことなので、「丙丁童子」は「火の神」を指しています。つまり、「火の神が、火を求める」ということです。これを、禅宗の修行に重ねていえば、「仏性を具えた人間が、仏性を探す」ということです。人間には仏性(仏の性質)が具(そな)わっていて、それによって、我々は成仏できるという考え方があります。

 しかし、「仏性」というのは、どこか別の場所にあるのではなく、あくまでも、自ら自身に具わっているものです。具わってはいるのですが、普段の自分には分かりません。普段の自分の思い込みなどを一度捨てて、その上で気付くのです。

 玄則和尚の過ちは、普段の自分が仏だと思い込んだことです。しかし、この言葉は、それを超えて、真に自分の心の奥底にある仏性に気付くように求めるものだったのです。だからこそ、自分の誤りに気付き、法眼和尚の下に帰ってきた玄則和尚が悟ったのです。

 ここから我々が学ぶべきは、いくら良い言葉を聞いても、自分の都合で理解していては、その言葉の良さを台無しにしかねない、ということです。

 それは、色々な仕事をするにしても、お客さんやクライアントの思いを自分の都合だけで理解していては、本当に良い結果にはならないかもしれない、ということになります。無論、唯々諾々とただ相手に従っているのも創造性に欠けますが、自分勝手なのも同じことです。

 結局は、自分も相手も、真に理想・目標とすべきことがらに真っ正面から向き合い努力する時、真に良いものができるという理解がよいかと思います。

(菅原研州)

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Profile
曹洞宗の研究機関で活躍する若手・中堅僧侶4人。
宇野全智(うの・ぜんち)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。山形県大石田町地福寺副住職
上月泰龍(こうづき・たいりゅう)/ 曹洞宗総合研究センター教化研修部門研究生。三重県鈴鹿市泰応寺副住職
菅原研州(すがわら・けんしゅう)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。宮城県栗原市城国寺副住職
関水博道(せきみず・はくどう)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。神奈川県横浜市東泉寺副住職

*4人の詳しいプロフィールは⇒こちら
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