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文字通りにとってはいけない!?禅のことば

2013年1月21日

「喫茶去(きっさこ)~お茶でも飲んできなさい」の真の意味

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 これまで、約4カ月にわたってリレー連載を続けてきた「禅のことば」ですが、せっかくですので、ここで一度、「禅のことば」とはどういうものなのかを、簡単に説明してみようと思います。

 仏教の世界で用いる言葉はほとんど、インドの専門的な仏教用語に由来しています。例えば、誰しもが成仏できる可能性のことを「仏性(ぶっしょう)」といいます。あるいは、「悟りを求める人」という意味だったのが転じて、大乗仏教という教えを信じ、修行する人を「菩薩(ぼさつ)」といったりします。これらは、元々のインドの言葉を意訳したり、音写(インドの音に合わせて漢字を当てはめること)したものです。「仏性」は意訳で、「菩薩」はボーディサットバの音写です。

 それと違って、「禅のことば」、いわゆる「禅語」とは、中国の日常語に由来しているものが多いです。それが、師弟のやり取りに美しく用いられたので、後の人が真似をして広まったのです。

 例えば、「喫茶去(きっさこ)」。意味は文字通りで、「お茶でも飲んできなさい」ということで、茶道でも用いる場合があります。しかし、禅ではここには留まらないのです。この言葉の裏には、「お茶でも飲んで目を覚ませ」という思いが込められています。それを合わせて考えますと、この言葉は、優しくお茶に誘う言葉ではなくて、「はぁ? お前、寝ぼけてんのか?」という叱責の言葉になるのです。

書:菅野惠然氏(茅ヶ崎芙蓉庵/神奈川県茅ヶ崎市)

 禅語は、文字通りにとってはいけないところに、その難しさがあります。

 他にも、「作麼生(そもさん)」という言葉があります。これは、ずいぶんと昔に放映されていた、アニメ『一休さん』(1975~1982年)で、禅問答を行う際に、質問者が「作麼生」と問いかけるので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。一休さんはこの問いかけに「説破(せっぱ)」と答え、「掛かってきなさい」とばかりに応答したのです。

 この「作麼生」とは、「△△とはどういうことか?」という意味で、日常的な中国語でしたが、禅の世界では禅問答の際の定型句になっています。また、問いかけの言葉であり、「作麼生」自体が具体的に何かの意味を指し示すわけではないことから、「意味が固定され得ない物事」に対して、用いることがあります。禅の世界では、物事をあれこれと分別するのを嫌い、「無分別」を強調しますが、その「分別せざること」を示す語として「作麼生」を用いるのです。ちょっと難しいですが、そういう使い方もします。

 禅語には、たった一字で、広い禅の世界をよく示す言葉があり、その字句を墨書(墨跡といいます)する禅僧もおりました。そして、日本の中世・戦国期に茶の湯が盛んになると、禅語の墨跡を茶室に掛けて楽しむ茶人が多く現れました。千利休が造った茶室は特に小さかったとされていますが、たった一字が禅の世界を表現するのと同じように、狭い茶室が宇宙そのものであると表現するために、墨跡が用いられたのです。よって、茶道を嗜む人が禅語に親しむと、より見識に深みを増すことでしょう。

 さらに禅語とは、たった一句を通して、よくこの世界の真実を会得し、我々自身の迷いを断ち切るための教えでした。それが忘れられますと、ただの字の羅列になってしまいます。そうならないためにも、「禅のことば」をより深く学び、親しむのはいかがでしょうか。

 禅語を学ぶには、1つには「禅僧に聞いてみる」という方法があります。主に臨済宗・曹洞宗・黄檗宗(おうばくしゅう)という宗派の僧侶は、禅語に親しんでいることが多いと思いますので、遠慮なくお聞きになってみるとよいでしょう。もしかすると、その時の問答が、後々まで記録に残るかもしれません。

 最近は禅語に関する手ごろな書籍も多く出ていますので、手軽に学ぶこともできます。

 そのほか、習字などでも、親しめることでしょう。自然の情景をそのまま読み込んだ禅語も多い(「柳緑花紅」など)ですし、ちょっと想像も付かないようなSF的内容の禅語(「露柱懐胎(次回紹介予定)」など)もあります。色々な意味が込められた言葉なので、想像力をふくらませながらの芸術制作にも応用できると思います。

 あるいは、今どきであれば、メールに使うとか、twitter・Facebookなどで呟いてみるとか、日常的に周囲の人達との会話で使ってみるとか…。禅語の一つに「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」という教えがあります。表面的な意味は「足元を良く見なさい」ということですので、階段を下りている人などに、「脚下照顧」なんて注意を促すと…。かえって危ないですかね。 なお、この言葉の深い意味については、自分の足元を見ることを転じて、「今の自分自身をよく反省し、顧みなさい」という教えです。

 禅のことばとは、一見すると難しく、また、厳しいところもありますが、良き人となるためのエッセンスなのです。

(菅原研州)

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Profile
曹洞宗の研究機関で活躍する若手・中堅僧侶4人。
宇野全智(うの・ぜんち)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。山形県大石田町地福寺副住職
上月泰龍(こうづき・たいりゅう)/ 曹洞宗総合研究センター教化研修部門研究生。三重県鈴鹿市泰応寺副住職
菅原研州(すがわら・けんしゅう)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。宮城県栗原市城国寺副住職
関水博道(せきみず・はくどう)/ 曹洞宗総合研究センター専任研究員。神奈川県横浜市東泉寺副住職

*4人の詳しいプロフィールは⇒こちら
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