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リベリアを生き抜いた女性活動家の軌跡

2012年12月22日

『祈りよ力となれ』リーマ・ボウイー

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『祈りよ力となれ』
リーマ・ボウイー

 英治出版/2310円
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2011年にノーベル平和賞を受賞した、リベリアの平和活動家による自伝。1972年に生まれ、成績優秀な女性ながらも、内戦の影響で大学進学を断念。その後はシングルマザーとして社会的な活動に携わるなかで自らが組織を率いるようになり、非暴力的な抵抗運動によってリベリア内戦の終結や女性大統領誕生に貢献するまでに至った。女性と見れば暴行を受けるような状況で、何を経験し、どう考え、いかに生き抜いてきたのかを、自らの目で振り返っている。


 リーマ・ボウイーがノーベル平和賞を受賞した新聞記事は印象に残っていたものの、具体的に何をしたのかは知らなかったので読み始めたのが『祈りよ力となれ』です。ハッピーな大学生活を送るはずだった彼女や家族の目の前で戦争が始まって、人が銃撃されたり誰も彼もがレイプされたりするような悲惨な状況があっという間に広がっていきます。食べ物もなくて何万人規模の難民キャンプができてそこに身を寄せざるをえない、そういう地獄の状況。ぽろぽろと出てくる話がすごく残酷なので、当時のリベリアでは誰もがひどい目にあっていたんだろうなというのが伝わってきます。きっと、彼女が書かない、書きたくないと思っている話もたくさんあるだろうし、ものすごい経験をした人だということは非常によくわかりました。

 ただ、子どもやボーイフレンドに対する感情的な思いにもすごくページ数が取られていて、ファクトが欠けている部分もありました。例えば、リーマの家族がリベリアという国のどの階層でどの程度お金持ちだったのかとか、そういうことも書いていません。本人にとっては当たり前すぎるからなのでしょうが、そういう客観的な事実も海外で読む人向けにもうちょっと説明してほしいと思いました。彼女の活動や団体についても、何をしたからノーベル賞を受賞することになったのかも、今一歩伝わってきませんでした。

 結局、自伝というのは本人の言いたいことしか載っていないものなのかもしれません。事実を知りたかったら、それは別の手でなんとかするしかないのでしょう。例えば同じ出版社から出ている『ブルー・セーター』という本は、アメリカ人企業家がルワンダで貧困を救う事業を展開する話です。ルワンダ救済に向けてどういう団体ができて何がダメだったかなどが、もっとジャーナリスティックに書いてあります。リーマ自身の活動については、アメリカ人映画監督によるドキュメンタリー『悪魔よ地獄に帰れ』を観ればいいということになるのでしょうか。

 彼女の活動やそこで何が起きたかを知るという欲は満たされないかもしれないけれども、それでも『祈りよ力となれ』には読む価値があります。この本から得られるのは、あきらめない強さや、見てるだけではなく、まず行動を起こそうという力強いメッセージです。精神的に大変な負担を人々にもたらす出来事が今でも起きているということに関して、もっともっと何か感じるべきだろうというようなことを、この本は非常に強く問いかけています。ひとりで何かをやっていくだけではなく、たくさんの人を組織することが確かな力になって、国を変えていきます。リーマは銃を持って戦ったわけではないけれども、非暴力で女性を組織することで、新たな女性大統領を生み出すことに成功しました。そういう成功例は、絶対に伝えなくちゃいけないんだなと思いました。

 ある意味では、ハッピーエンドと言える内容だと思います。彼女らの努力は実っていますし、どんなにひどい状況でも希望の道は開けるという象徴でもあります。現場を知っていて、PRするべき世界も知っていて、両者をつなげられる人。こういう人がいないと、リベリアで何が起きているのかが世界にまったく伝わりません。私も地図を見て、リベリアの位置を確認したぐらいです。彼女の成功の裏には、何万人もの苦しみがあったはず。この人は、内戦を生き抜いたリベリアの女性の中でも運が良かったとも言えるでしょう。この人か、大統領かの、どちらかが。

構成/土田 みき

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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