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あの詐欺事件はいかにして起きたのか

2012年12月21日

『和牛詐欺』斉藤友彦

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『和牛詐欺』
斉藤友彦

 講談社/1575円
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2011年8月に負債額4300億円超で経営破たんした安愚楽牧場。被害は、沖縄から北海道まで全国7万人以上ものオーナー(出資者)にまで広がった。戦後最大規模の被害を出した和牛詐欺事件として、自他共に「詐欺専門」と認める共同通信社記者が資料などを分析しながら真相に迫った書。また、1990年代と2000年代後半の和牛信託商法「ふるさと牧場事件」、その他の詐欺事件や悪徳商法も紹介し、騙し・騙される犯罪がなぜなくならないのかを問いかける。


 『和牛詐欺』のタイトルを見て思い出したのは、投資に詳しい知人から以前「和牛の投資を手がける会社がたくさん潰れるなかで安愚楽牧場は残っていたからいいのかと思っていたんだけども、あれも詐欺だったんだよね」と言われたことでした。「安愚楽牧場事件」とはつまりどういう話だったのかを確かめようと思って読み始めました。「安愚楽牧場の和牛投資は詐欺だったんだっけ?」と疑問が残っている人も多いと思います。「震災の影響で潰れたんじゃないか」と思っている人もいるかもしれません。

 全3章の1章目が「安愚楽牧場事件」の話で、事実をきちんと整理して書いてくれているので、何があって何がどうしたのかという状況はよくわかりました。2章目は、「安愚楽牧場事件」に似た事件でもっと前に著者が扱った和牛詐欺事件について書いています。3章目では自身が取材したり携わったりした詐欺事件をいろいろ寄せ集めています。このあたりの編集は少しややこしいと思いました。色々な話を通じて、騙した側の悪意を追及したいのかなと思う一方で、ところどころで騙された側の老後の資金が無くなったとか情緒的な話を挟みこんでいて。同じ百万円失ってもたいしたことがない人もいれば、それが命の支えの人もいます。でもそれはそれで騙された側の事情なのであって、騙した側の意識や罪とは別の問題です。

 最近はどうも書いている人の年齢が、ひっかかることが多い。この本の著者は1972年生まれでまだ若いのに書き方がものすごい年上な感じを受けます。共同通信を退職した人が書いた本だと思ってずっと読んでいて、あとでプロフィールを見て「え?こんなに若い人だったの?」って。事件に対する姿勢とか騙された側に対する自己責任の追及とか、書き手の記者と私の間にどうも距離感を覚えてしままうのです。

 何よりも「安愚楽牧場事件」の一番のポイントである「こんなことをしたら儲かるわけがない」仕組みについて、本の中で税理士の人が「税理士なら誰でもわかりますよ」と言っていますけど、足し算ができれば誰にでもわかります。記者として、ここまで数字に弱くていいのかなと思いました。おかげでキャッシュフローだとかお金の流れをわかりやすく説明してくれていて、そういう意味で役に立つとも言えますけど、結局は最初から無理な投資話なんですよね。牛の餌の値段は上がったり下がったりするだろうし、牛も病気になるだろうし。その上でアメリカから値段が下がった牛が入ってくるとかいろいろな状況があるのにもかかわらず、「牛に子どもが生まれたら必ず儲かります」というのはおかしいですよね。安愚楽牧場をはじめとする和牛詐欺というのは、ただそれだけの話なんです。

 インターネット詐欺や自分では儲かると思い込んでいる人が提案する儲け話などまで混ぜて無理に1冊にまとめないで、1章だけで止めておいてくれれば、世間を賑わせた「安愚楽牧場事件」が「こういう話だったのか」と思えてよかったんですが。2章、3章と最後まで読むと、「結局この人は何が言いたいんだろう」と視点の甘さを強く感じてしまいます。1章だけだと本の厚さにならないのなら、雑誌に書いてもよかったのではないでしょうか。ページ数が少なくても1冊になる新書として、1章の「安愚楽牧場事件」だけをまとめてもよかったでしょう。新書であればまったく納得できた内容だけに、残念でした。

取材・構成/土田 みき

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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