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中小企業の7割は粉飾決算している?!

2012年12月14日

『四〇〇万企業が哭いている』石塚健司

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『四〇〇万企業が哭いている』
石塚健司

 講談社/1575円
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「破綻寸前の会社に粉飾決算を指南して“金のなる木”に仕立て上げる常習的犯行」として、2011年9月に経営コンサルタントと小さなアパレル会社社長が逮捕された。検察の告発で会社は倒産に追い込まれたが、マスコミは検察からリークされた内容のみで事件を報道。本書で明かされているのは、検察の言い分とは異なる事件の姿。中小企業400万社の7割超が粉飾決算をしている現実を踏まえ、刑事事件における検察のあり方を強烈な筆致で描くノンフィクション。


 読むと、とにかく語りたくなっちゃうのが『四〇〇万企業が哭いている』です。ものすごく「ひどい!」と言いたくなっちゃう話だし、論点もたくさんあるし、いろいろな意味で読者に考えさせます。この事件は新聞で読んで「悪いコンサルタントもいるんだなあ」と思ったのを覚えていますが、本を読んでみたら全然違いました。まさしく検察の考えたストーリー通りに事件を受け止めていたんですね。この本に書かれているすべてが本当かどうかはわかりませんが、マスコミ発表のままではない話もあるんだと思わされました。新聞に載っているものをそのまま鵜呑みにしてはいけないとも。

 検察というものは、一度間違った方向に行くと戻れないものなんですね。検事さんの能力というものが、まずすごいと思います。取り調べで聞いたことをうまく作文して、最初に考えていたストーリー通りに仕上げる能力です。真実かどうかではなく逮捕前に想定したストーリーにハマる文章を書くことが検事さんのお仕事だという風にとらえると、「なんて優秀な人たちなんでしょう!」と感心してしまいます。普通の人は、検察でしゃべったことはちゃんと書いてもらえると思いますよね。でも、まったくそうではないということが、よくわかりました。

 検察と一般企業では、世界が違うんですよね。逮捕によって会社を潰されて一生を台無しにされたアパレルの社長ですが、OEMから始めて、自分のブランドを作るようになって、立派な会社を経営していた方です。起業家物語として非常に美しいんですけど、検察からは全然信頼されません。コンサルタントも、一般の目からしたらバカげた仕事しかしていないように見える。都銀を飛び出して中小企業の社長を助けている立派な人なんだけど、検察から見えると単なる無名の“あやしい”コンサルタントなんですよね。

 そもそも世の中には、粉飾決算を悪いと意識していない経営者がすごくいると思います。実際は赤字でも書類上では黒字にしないと銀行からお金が借りられないことは、みんな分かっています。「お金を借りられないから多くの中小企業が赤字を後ろにずらすようなことをしている」ということが、事件には無関係の税理士の話としてこの本の中にも書いてありました。借金をして前もって投資をして、利益を出して返していくのが、商売の基本です。ちょっとでもチェックすれば分かるそういった事実が、検察や検事さんには見えないんですよね。世の中の当たり前と法律のズレが、感覚として分からないんです。その感覚がなく、良し悪しの判断もできない人たちが、こういう事件を調べています。しかもマスコミ受けするとかしないとか、そういうことばかりに気にしながら。マスコミが事件の本質を見抜けるようだったら、検察もくだらないマスコミ対策をしないはずなので、マスコミの力が弱くなっているということも言えるかもしれませんね。

 ただ、そうは言っても、こういうことをちゃんと掘り当ててくれるような新聞記者がいて、これだけ時間をかけて取材して書いてくれていますからね。私も、読む前は著者の方を知りませんでしたし、タイトルや装丁もピンとは来なかったんですけど、本屋さんで手に取ってめくってみたら意外と引き込まれたんです。この時点では内容というよりは文章がちゃんとしているという印象だったのが、読んでいくと「次はどうなるんだろう?」と、どんどん引き込まれていきました。本当におもしろかったです。この本の存在には気が付かない人も多いと思いますが、広く多くの人に読んでほしいと思える1冊でした。

文・構成/土田 みき=ライター

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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