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ユニクロ柳井社長が描く日本の現実

2012年11月7日

『現実を視よ』

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『現実を視よ』
 柳井正

 PHP研究所/1575円
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「ユニクロ」ブランドの世界的な活躍も目覚ましいファーストリテイリング柳井正社長が、停滞する日本に警鐘を鳴らすために記した書。プロローグ「成長しなければ、即死する」から始まり、「『資本主義精神』を忘れた日本人」「政治家が国を滅ぼす日」と過激な章立てが続く。日本をリードする企業のトップとして、世界経済に見る日本の実態を具体的に示し、国民ひとりひとりの意識と行動を変えないと現状は打破できないと強く諭している。


 「柳井さんがどんなことを書くのだろうか」という興味で手に取ったのが『現実を視よ』です。国内だけで年間1兆円近い売り上げを持つユニクロの実績は、やっぱり強いです。柳井さんを崇め奉っている人も多い世の中では、それなりに売れる一冊でしょう。「誰が言っているか」によって動く人も多いと思うので、柳井さんの名前でこういった本を出す価値はあると思います。

 論旨はすごくはっきりしていて、わかりやすい本でした。「日本の現状を見ていられないから、発言します」というストレートな内容で、以前に大前研一さんと共著で出した『この国を出よ』で言っていたこととほとんど同じです。日本を変える処方箋としての新鮮味があるかというと、聞いたことがある話を寄せ集めたような印象を受けました。自分の会社に対してユニークなことをできても、国に対してはほかの人と同じようなところに行ってしまうのはどうしてなのでしょうか。柳井さんらしいユニークな提言が必要ないくらい日本がひどい状態にあるのかとも思いましたし、彼にとってはビジネスのほうが向いているから発言内容が平凡になってしまうのかとも思いました。

 柳井さんは、事業者として自分の会社で自分の命令を聞かせることは得意でも、多様性のある社会でみんなの最大の配を作り出すことは向いていないだろうなと感じてしまいました。パワーショベルみたいに物事を動かす力や勢いは、すごくあるんですよね。でもその半面でなくしちゃっている複雑さみたいなものもあるような気がして。

 私は昔からユニクロに対して「ファッションというものがそんなに好きではないんだろうな」という感覚を持っていました。柳井さんは、ほかの業界でも十分に社長業をやっていかれる人だと思います。ファッション界は、社長という専門職以外のところで、夢をかけている経営者がたくさんいるところです。他の業界の社長はできなくて、ファッション会社の社長しかできないような人たちです。一方、柳井さんはというと、本当は、金型部品を作る業界とかのほうが向いていたんじゃないかという気がします。お父さんがたまたまアパレルだったから、大量生産の考えと世界に向けた大きなビジョンをアパレルに持ち込んだだけです。当時は誰も大規模な生産という考えもなく、狭い社会で勝負していたアパレル業界だったから、ユニクロのビジョンや方法が目立ったのだと思います。

 『現実を視よ』も、日本がどうなるかという本筋の話よりも、ところどころで示される「ユニクロではこうやっています」という話のほうが、おもしろみがあります。実際のところ、みんなが読みたいのもその辺りの話なのではないでしょうか? ユニクロはなぜあんなに成功しているのか、私たちが知らない新しい仕組みがあるのではないか、今後のユニクロはどうなっていくのか。そういうユニクロの話はとても興味深く読めました。

 柳井さんのおもしろみが全体としてあまり伝わってこなかった一冊でした。柳井さんの言うことだから耳を貸すという人もいると思うので、冒頭で述べたとおり、こういった人が書くことには意味がある本なのだと思います。

構成/土田 みき=ライター

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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