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4度のがんを乗り越えた政治家の闘病記録

2012年9月19日

『全身がん政治家』与謝野馨

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『全身がん政治家』
与謝野馨
 文藝春秋/1470円
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35年にわたるがん闘病人生を初めて公にした手記。最初の宣告(悪性リンパ腫)は、39歳のとき。初当選の翌年で、政治家人生を歩み始めたばかりだった。以降、党幹部や大臣などの重責を担う裏で、直腸・前立腺・下咽頭と3つの新たながんと3回の再発に見舞われた事実、都度の課題や対処などが、自身の回顧や医師の談話で記される。長いつきあいである国立がん研究センター中央病院で、医師約100名を前に経験を語ったことがきっかけで生まれた書。


 与謝野馨さんが、政治じゃなくてがんの話に絞って半生を振り返ったのが『全身がん政治家』。4つのがんにかかったというインパクトに加えて、医学情報もたくさん盛り込まれています。政治家の自伝は手柄話になりがちですが、「がん患者だけど政治家」という非常に珍しい話です。多種多様な治療を体験していたり、様々な状況に冷静に対応していたり、がん患者としても異質なところがあります。「体験を書いたらどうですか?」とお医者さん側から提案された理由も伝わってきます。

 与謝野さんは、30代でまず「余命2年」と宣告されて、現在まで7回のがん宣告を受けてきました。その与謝野さん自身のストーリーと、お医者さんたちの話と、最後にはほかのがん患者の話も交えていて、見た目よりもボリュームを感じる内容です。盛りだくさんですが、プロの医療ジャーナリストが構成して書いているので、とても読みやすい。お医者さんから見た話の差し込み度合いがちょうどよく、「この辺で知りたいな」というところで入ってきます。

 「高気圧酸素治療は素晴らしい」とか、がん治療の進歩も印象に残ります。病気に関して一番詳しいのは、もちろんお医者さんです。今でこそ「セカンドオピニオン」という考えも広まりましたけど、お医者さんによっていろいろと見方が違うということや、お医者さんの持っている情報と普通の患者が持っている情報の質があまりにも違うということも再認識しました。恵まれた立場にいる人には、ちゃんとした情報が集まってきます。だからこそ、与謝野さんみたいに代替療法や民間療法にまったく興味を持たずにいられる人もいるんだなと実感しました。ただ、与謝野さんはやっぱり特別な人です。一般の人が与謝野さんと同じように治療を受けるのは、なかなか難しいと思います。「与謝野鉄幹の孫」という特別感は初めからありますし、新たな症状が出たらその分野の一番いい先生へ紹介されたり、仕事の合間に運転手さんの車で治療に行ってまた戻ってきたり。そういうことは、一般のサラリーマンではできないですよね。

 与謝野さんの生き方をロールモデルととらえて、自己啓発的な読み方をすることもできるでしょう。私にとっては、新聞の政治面などで知る限りにおいてあまり主義主張が合うタイプの政治家ではありませんでしたが、どこか紳士的な印象は持っていました。そのイメージが、『全身がん政治家』一冊を通じて表れています。「待ち時間があってもちゃんと待っている」とか「痛くても『痛い』と言わない」とか。人柄と政策とは、やっぱり種類が違うものなんだなというのを却って思いましたよね。あと、がんは生命にかかわる話です。治療だの宣告だのと毎日突きつけられるなかで、政治家のお仕事は長期的なことを考えなくちゃいけません。だからこそやりがいがあるという話かもしれないんですけれども、自分より後に政策を残していくお仕事として、薬害肝炎訴訟の議員立法案をまとめるなど、がんを通じて視点が広がったことはよかったんだろうなという気がしました。

 最初は、「政治活動の陰で病院に通って大変」とか「落選している間に入院できてよかった」とか、ドラマチックなものも感じましたが、すべてを受け入れている姿勢に「こういう生き方もあるんだな」と思うようになりました。苦しいお話なんだけど、やっぱり励まされるようなところもあります。予想外に、読後感がさわやかな一冊でした。

構成/土田 みき=ライター

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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