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世界の経済格差をなくすための第一歩

2012年9月7日

『世界の99%を貧困にする経済』ジョーゼフ・E.スティグリッツ

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『世界の99%を貧困にする経済』
ジョーゼフ・E.スティグリッツ
 徳間書店/1995円
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 著者は、1990年代半ばにアメリカの経済政策運営に携わり、90年代後半は世界銀行の上級副総裁などを務めながらグローバル経済を見つめ、2001年にノーベル経済学賞を受賞した経済学の世界的権威。最新刊である本書では、所得格差が経済成長を妨げているアメリカの現実をとらえ、世界に広まりつつある不平等/不公正なアメリカ的社会構造の原因は市場原理に基づくと解説。より公平で効率的な社会に転換するための要件を示唆している。


 『世界の99%を貧困にする経済』は、読んでおかなければいけない本です。著者のスティグリッツはノーベル経済学賞受賞者で、経済学の教科書もたくさん書いています。私も、スティグリッツの教科書は読みました。この本は一般向けなのでスティグリッツの著作にしてはやさしく書いてありますが、全部を理解するのは経済の専門家でもなければ難しいとは思うので、「そういう意見もあるんだ」という目で読むしかないと思います。自分が納得できるエピソードや、「実はこういうことなのかな?」というところを拾うだけでも、見解が広がるのではないでしょうか。

 全体を通じてスティグリッツが強く言っているのは「今までの経済学はやっぱりダメ」ということです。その主張は、今までの経済学を信じてきた人たちにとってはかなりショックでしょうね。スティグリッツは昔から市場経済のゆがみやほころびを指摘してきた人ですが、そういったほころびが現実社会に表れてきているので、みんなに改めて伝えたくて一般向けにこの1冊を書いたのだろうと思いました。「私が前から言っていたような世の中になってきましたよね」と。

 この本がアメリカで出版されたときは、「アメリカはみんなが信じていたようないい国じゃないんだ!」という驚きを読者に与えたと思います。みんなが今まで追いかけてきた「市場は正しくて、アメリカンドリームは起こりうる」という世界経済のベースが、「幻だった」と権威ある人が訴えているのです。また、全体的にかなり挑戦的な書き方というか、人を怒らせるような書き方をしているんですよね。経済学者の中にはスティグリッツの考えに反対する人もたくさんいますので、この本の内容に対しても「市場原理で物事はうまくいっている」と強く反発する人が出てくる気がします。

 アメリカの話が中心になっていますが、アメリカが崩れるか崩れないかは世界に大きな影響を与える話なので、ここに書かれている内容は抑えておかないといけない感じがします。スティグリッツの基本的な考えは、「ルールによって人間の動きは変わる」ということです。例えば、税制が一定率でフラットになったとしたら、助成金や減税の抜け穴で儲けていた企業や団体の余計な取り分がなくなります。そこまで透明になると社会全体としての非効率がずいぶんなくなるはずだと言われると、納得できます。

 とにかく、もっときちんとまじめな自由競争ができるように税制や法律を整える義務が政治にはあるだろうということなんですね。第10章には世界を変えるための具体策が示してあるのですが、読んでいるときは「短すぎる」と感じました。ここまで説明してきたんだからもう何章か書いてほしかったと思います。ただ、第10章で示されている7つの指針を実践するだけで世界が変わるとスティグリッツは考えているのかもしれません。手順はシンプルだけれどもみんなで一斉にやらないと意味がないから、スティグリッツの考えに反対する学者もいるこの世の中では実現まで至らないという風にも受け取れます。

 スティグリッツが言うように、何もしなかったらもっともっと格差は広がっていくのかもしれません。そうなのだとしたら、私たちは格差が広がる世界を作らないために、スティグリッツの意見をちょっと思い出しておいたほうがいいのかなと思いました。

構成/土田 みき=ライター

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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