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冥王星を“殺した”張本人の作品

2012年9月1日

『冥王星を殺したのは私です』マイク・ブラウン

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『冥王星を殺したのは私です』
マイク・ブラウン
 飛鳥新社/1680円
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 カルフォルニア工科大学(カルテック)惑星天文学部の教授である著者は、2005年に冥王星の外側に大きな天体を発見し、「第10惑星の発見者」として有名になった。しかし翌2006年には、国際天文学連盟が提案した「惑星」の新定義に異論を唱え、自らが発見した天体と冥王星を「惑星」の座から引きずりおろす……。新天体(と惑星の定義)にまつわる騒動と、新天体発見直後に出生した第一子の様子の両方を、臨場感豊かにつづったサイエンス読み物。


 読んでいる間は素人っぽさやだらだらしたところが少し気になりましたが、最後にはすごく納得して読み終えたのが『冥王星を殺したのは私です』です。タイトルもいいですし、「なぜ冥王星が惑星ではなくなったのか」ということについて、終わりのほうにしっかりとまとめているので、「そうなんだ」と思えたました。研究の進め方や定義に関する考えなども新鮮でしたし、天文学者の一日はこういう風なことをやっているんだということもわかりました。後半で子どもが生まれてからは育児に関する話も多くて、タイトルや見た目からはこんなに家族の話が出てくる感じはしなかったなとも思いましたけど。

 この本を読まなかったら、私も「冥王星は惑星のままでよかったんじゃないの?」と思っていたでしょう。でもそこを「惑星とは違うんだ」と納得できたのは、非常に深く冥王星のことを考えている著者のオーラに負けたからです。やっぱり物事は、深くよく考えている人のほうが強いんです。説明しにくいことをわざわざ1冊かけて一般の人に知らせようとする熱意と知識は、ちょっとネットで検索した程度の表面的なものとは違いますよね。仕事人というのは、ここまで専門性を持って物事を追及する人のことなんだなと思いました。

 六本木アカデミーで話をしてもらっている天文学者の方が以前言っていました。「宇宙の果てには何があるんだろうと思ったのが、ずっと忘れられないんです。だからずっと僕は研究をしています」と。仕事や何かの道を追及する人はみな、まずひとつ疑問に思ったことがあって、それがどういう形になっていくかを追い求めているだけなのではないでしょうか。私は六本木ライブラリーでいろいろなコミュニティを作っていますが、それはコミュニティ同士がどういう風に作用していくのかに興味があるからです。以前の職場でナレッジマネジメントを専門にしていた中で「どういう風にしたらみんなが知を共有できるようになるか」を突き詰めてきたら、こうなりました。

 私は、仕事柄「場所」という外的な要因が人の考え方に与える影響について、もっと知りたいと思っています。人は感情の動物なんだけれども、その感情に影響を与える要素はものすごくたくさんあります。どう場を作ったらコミュニティが盛り上がるかぐらいまではわかっているのですが、それにプラスしてほかの要素をどう取り入れていけばいいのか…。そういう意味では、この本に出てきた天文学会の場は非常に楽しそうでいいなと思いました。世界中の天文学者がみんなで喧々諤々と、ひとつのテーマについて話をしています。みんなが一番興味を持っている対象が、同じなんですよね。天文学者のみなさんにとっては、どれが惑星であってどれが惑星でないということが、非常に大きな事件で。そこにかける情熱というのが、一番印象に残りました。惑星に限らず、何かを発見したり発明したりすることに、研究者の誰もがすごく興味を抱いているんでしょうね。

 科学者的なセンスや物の考え方、発見や定義をおもしろがる点については、実は女性のほうが向いているのではないでしょうか。几帳面にきちんきちんと「こうだからこうなる」とモデルを決めることに興味を持つ女の人も多いでしょうし。著者のブラウン教授の教え子にも、女性が増えています。地道にデータを取りつつ「この先にはこういうことがあるはずだ」と進めていく自然科学系の研究職は、まじめな女の人には楽しい仕事なのだろうなと思いました。

構成/土田 みき=ライター

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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