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不登校をきっかけに深まる父子の関係

2012年8月24日

『父と息子のフィルム・クラブ』

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『父と息子のフィルム・クラブ』
デヴィッド・ギルモア
 新潮社/1995円
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 ある日、高校生の息子が宣言する。「学校になんか、もう二度といきたくないんだ」。息子の意志を尊重した父は、自由にさせる代わりに自分と週に3本の映画を観ることを義務付ける。映画評論家としての仕事に行き詰まった父と、勉強嫌いで恋愛に悩む息子。『大人は判ってくれない』から、実現しなかった「秀逸な脚本」グループの鑑賞まで、父の選んだ映画120本を一緒に観続けた3年間を通じて、変わっていくふたりを父の目から語ったカナダ発の実話。


 自分にはわからない感覚を味わいたいと選んだのが『父と息子のフィルム・クラブ』です。まず、「父と息子」という関係性が、女性である私にはわかりません。それに加えて、私自身が映画を観るのは嫌いなので、その両方が合わさったこの本は「どういう世界なんだろう?」って。

 映画は、飛行機が怖いからフライト中に気を紛らわすために観ることはあるんですけど、ふだんはまったく観ません。映画館に行くのも10年に1度あるかないか。だから、映画に大きな価値を見出すこと自体が、私には全然わからないんですよね。大学時代など、「毎日映画を観る」というような人が私の周囲にもいました。翻訳者の高見浩さんもそういうタイプみたいで、解説で楽しそうに映画のことを書いています。だけど「何がそんなにおもしろいのかな?」というのが私の本音なんですね。一方、この本で親子が映画を観ていくなかで、お父さんが「手の動きが」とか「セットに注目」とか映像シーンを解説するのを読んで「なるほど。そういう視点で映画を観るとおもしろいのかもしれないな」と思いました。

 もちろん、映画の話ばかりでなく、お父さんと息子の生活の様子も描かれています。お父さんがあまりにも子どもに甘いので、突っ込みどころはたくさんあるんですけど、息子をすごく愛していることは確かに伝わってきます。20才近い息子の恋愛にまで余計な口を出すほど、お父さんは息子に入れ込んでいて。息子に何かを教えようと映画を選ぶのも、私だったら絶対にイヤだと思いました。「あなたが計算したような教育効果は出ませんよ」と言いたくなっちゃいます。でも息子は「こういうところを僕に読み取って欲しかったんでしょ」みたいなことを言ってあげます。おもしろくなかったときは素直にそう言います。子どものほうが意外と冷静で、お父さんの、非常に極端で、子どもっぽいところが目立つんですよね。

 お父さんのことは最後まで好きになれなかったし、出てくる映画への興味もないのですが、だからこそ新鮮でおもしろく読めたところもありました。新たな視点を与えてくれるというか。読み終えて一番思ったのは、「人は自分にできるベストをつくして生きているんだな」ということです。自分が本当に映画が好きで、息子も好きだから、学校に行かなくなった息子に対して自分にできる唯一の教育は映画を選んでみせることだということなんですね。お父さんが自分が一番詳しいことを自分の息子に与えて、そこから何かを学んで欲しいと思うストレートな気持ちには、間違いがないなと感じました。

 父と子がこういう風にかかわれるのは、非常に珍しいと思います。日本でも「学校に行かなくてもいいよ」まではあっても、日中に子どもと一緒にすごすための時間を取れるお父さんはほとんどいません。この家庭の場合は、たまたまお父さんも仕事が減っている時期で、時間もあったと書いてあります。こういう濃密な時間をすごせたのは、息子大好きなお父さんにしてみたら一番うれしいことで、息子とすごした時間の中で一番ハッピーだったからこそ本として残しているんですよね。いろいろな父子関係があるなかで、このお父さんは本当にベストを尽くしている。最後まで相容れない感覚を持って読んでいるのに読後感がいいのは、それを感じられるからなのでしょう。

土田 みき=ライター

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Profile
小林麻実(こばやし・まみ)
アカデミーヒルズ六本木ライブラリー・アドバイザー
早稲田大学法学部卒業、同大学院国際経営学修士(MBA)課程修了。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同博士課程中退。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社において、世界15万人の社員による情報・知識の交換および創出を目指し、ヴァーチャルライブラリーを推進。「ライブラリーとは、個人が持つ情報を他者と効果的に交換し、イノベーションを生む場である」というコンセプトを構築し、2002年に六本木ライブラリーディレクター就任。著書『図書館はコミュニティ創出の「場」ー会員制ライブラリーの挑戦』(勉誠出版、2009)他。
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