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五輪・平井コーチの金言「必死で頑張るということ」

2012年8月4日

平井コーチ「忙しいときほど自己との対話が大事」

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北島康介選手や中村礼子選手を2大会連続五輪メダリストに育てた日本代表ヘッドコーチの平井伯昌さん。

ロンドン五輪には、チームジャパンを、そして北京五輪後から指導してきた背泳ぎの寺川綾選手、

バタフライの加藤ゆか選手、自由形の上田春佳選手を引き連れ、メダル獲得に挑む。

性別も性格も能力も違う選手たちが壁にぶち当たった時、

平井さんはどのような考え方で乗り越えさせてきたのか。

世界で結果を出し続ける名将の思考法は、働く場面でも非常に参考になる。

平井さんの考え方を、8つの「名言」から紹介する。

自己との対話が
決断力を養う

 2009年、ローマでの世界選手権や国体などの主要な大会が終わり、選手たちが来シーズンに向けて練習を開始した頃、私は、自由形でロンドン五輪に挑む上田春佳と話す機会を持ちました。彼女は小学生の時から見ていますが、なかなか私の指示することが定着しません。何を言っても右から左に抜けていき、翌日になったら忘れているような選手です。

 何とか自覚を持ってもらいたいと、当時大学生だった彼女にポイントを2つに絞って伝えました。

 1つは「春佳、とにかくもっと自分に厳しくなって、必死に頑張りなさい」と。ざっくりとした言葉ですが、彼女にはぜひ我慢強く一途に練習に取り組むことを経験してほしいと思っていました。「必死で頑張る」。口では簡単に言えますが、これを妥協せず実行し続けるのはなかなか大変です。

 仕事の場面においても、「何事も納得しないと行動したくない」と言う人や、上司の指示に対して「なぜ自分がそれをやる必要があるのか」と意見する部下がいます。中には「自分がやりたいと思うことだけをやりたい」という人も。確かに、問題意識や動機を持って物事に取り組むことは、より良い結果を生み出すために大事なこと。納得したうえで取り組めば、やる気も出ます。

 スポーツでも、競技力を向上させるには、なぜそれをやると強くなるのかという理屈が分かっていた方がいい。でもそれは「最終的」でいいんです。それよりも大切なのは、とにかく忍耐力を持って物事に取り組めるかということ。効率や動機ばかりが先立って、忍耐しながら必死に頑張る経験がごそっと抜け落ちていれば、本当に辛い時期に乗り越えることなどできません。

 根性論のように聞こえるかもしれませんが、その基本部分が抜け落ちている人が意味ばかりを求めても、肝心な時やピンチの時に結果を出せません。意味にこだわる前に、まずは何も考えず、極限まで自分を追い詰めてみる。若い時だからこそ、そんな課題を自分に課せるのではないかと私は思います。

 2つ目のアドバイスは、「私の指示を待つばかりでなく、自分で考えて動きなさい」ということでした。

 彼女はまだ私の指示を待つ傾向がありました。それはコーチに忠実である証しであり、ティーチングがしっかりできてきた結果です。しかし、それでは体は鍛えられるけど、頭は何も使わない。私の指示通りに動けばいいのだから、いつも楽ちんです。言われたことしかできない選手になってしまいます。

 指示されたことを一生懸命に遂行するティーチングの次の段階として、コーチの目があろうがなかろうが自分の意志で行動できるようにならなければいけない。なぜなら、大舞台のプレッシャーがかかるスタート台まで、私は隣にいてあげることはできません。人の助けを必要としなくても自分で納得して臨める思考と強い心が必要です。

 自分の意志で行動するには、明確な目的を持つことが大事。そこで私は、彼女に現段階の立場を認識させることにしました。人生という地図の上で春佳が今どこにいるのか、どんな立ち位置なのか、イメージさせるのです。そして、どんな心構えで進むべきなのかを自覚させます。

 「来年で大学は卒業。普通はみんな社会人として働くんだぞ。社会人になって競技を続けるなら、給料を頂いて泳ぐという自覚を持たなければいけない。しかも、五輪は北京に続いてもう2回目になる。いいか、初めての五輪じゃない。2回目の五輪という意義をもっと考えなければいけないよ」

 大学生の春佳は不思議そうな顔をしていたので、どこまで通じたか分かりません。でも、間違っても「授業がなくてそのうえ給料がもらえるなんて、何て楽なんだ!」などとふざけた考えは持ってほしくなかった。給料を頂いたうえに、企業にお世話になるのだから結果を出すために必死に頑張らなくてはいけない。

 今の立ち位置が分かれば、どのような行動を取るべきかを考えられるようになります。

 考えを深めたり、整理したりするには、自己との対話が効きます。コーチの目や周囲の評価を気にするのではなく、「どれだけ頑張れたのか」「まだやれることはないのか」と自問自答して客観的に自分を評価するクセを身につけるのです。春佳にもそうした自己との会話を大切にしてほしいと思いました。

 これはスポーツ選手に限った話ではありません。上司や周囲の評価ばかりを気にして、真の目的を見失ったまま何となく行動している人は、「何のための仕事なのか」「何のために働き続けているのか」という根本部分が抜け落ちている場合が多い。それでは人生を振り返った時に悔いが残るだけです。そこで、自分とのコミュニケーションを取れば、反省と次への課題が見つかる。その繰り返しが、ぶれない信念や決断力を育てます。

 私も自己との対話を大切にしています。プールサイドを何往復もして、歩きながら戦略や選手の指導法を考えています。五輪直前の海外合宿では、練習後に1人で1時間ぐらい散歩に出かけていました。練習内容やレースの作戦に関して自問自答するためです。その時間があったからこそ、迷うことなく選手に次の指示を出すことができた。

 毎日が慌ただしく過ぎていくと感じている時こそ、定期的な自己との対話が大事。進むべき道に光を照らしてくれます。

(※『突破論』より)

『突破論~世界で勝ち続ける秘訣、60の“金言”』
日経BP社、1470円(税込)

北島康介選手や中村礼子選手を2大会連続五輪メダリストに育て、伸び悩んでいた寺川綾選手をロンドン五輪で金メダルが狙えるほどに復活させた、競泳日本代表ヘッドコーチ平井伯昌氏の思考法が満載の一冊。結果が出せず、伸び悩んでいる選手を復活させるために、名将は何を考え、どのような指導をしてきたのか。選手のやる気と能力を引き出し、限界を乗り越えさせた育成論を、種目や性別、性格、年齢も違う選手たちの指導例からテーマ別に紹介していく。悩みながらもトライ&エラーで導き出した“平井式メソッド”は、アスリートだけでなく、ビジネスパーソンの教育・成長に役立つはずだ。


構成/高島三幸

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Profile
平井伯昌
平井伯昌(ひらい のりまさ)
1963年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、東京スイミングセンターに入社。アテネ・北京五輪の2大会で、北島康介選手に100m、200m平泳ぎで金メダル、中村礼子選手に200m背泳ぎで銅メダルをもたらす。北京五輪後、競泳日本代表ヘッドコーチに就任。2011年上海世界選手権で、北京五輪後から指導している寺川綾選手が50m背泳ぎで銀メダルを獲得。寺川選手のほかに、バタフライ日本記録保持者の加藤ゆか選手、自由形日本記録保持者の上田春佳選手といった教え子をロンドン五輪に送り込む。現在、『日経ビジネスアソシエ』で「平井伯昌の“金メダリスト”育成塾」 を連載中。新著『突破論~世界で勝ち続ける秘訣、60の“金言”』(日経BP社)を発売。平井レーシングチームのHPは⇒こちら/写真:(c)小川拓洋
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