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五輪コーチの金言「学ぶ姿勢が結果を左右」

2012年8月3日

平井コーチ「中村選手が私に言った言葉で見えたこと」

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北島康介選手や中村礼子選手を2大会連続五輪メダリストに育てた日本代表ヘッドコーチの平井伯昌さん。

ロンドン五輪には、チームジャパンを、そして北京五輪後から指導してきた背泳ぎの寺川綾選手、

バタフライの加藤ゆか選手、自由形の上田春佳選手を引き連れ、メダル獲得に挑む。

性別も性格も能力も違う選手たちが壁にぶち当たった時、

平井さんはどのような考え方で乗り越えさせてきたのか。

世界で結果を出し続ける名将の思考法は、働く場面でも非常に参考になる。

平井さんの考え方を、8つの「名言」から紹介する。

求めるものを明確にして
貪欲に学ぼう

 目標を達成するために何が必要だと思いますか? 目標の立て方、達成までのプロセス、何が何でも達成するという強い意志など、考えられる要素はたくさんあります。そんな目標達成の術を、指導してきた選手から逆に教わることもありました。

 アテネ・北京五輪で銅メダルを獲得した中村礼子は、2003年、私のチームに入って指導を受けたいと頼んできました。アテネ五輪まであと1年という状況で、北島康介に何が何でもメダルを獲らせるつもりだった私は、その申し出を断りました。でも、何度も頼みに来る。最後は私が根負けし、練習を見ることになりました。その時、彼女が私に言ったのは、「私は国際大会で力を発揮できないので、試合では平井先生に私の心の支えになってほしい」という言葉でした。

 この言葉を聞いて、私は彼女に2つの印象を抱きました。1つは彼女の中の意識のレベルがとても高いことです。それまで世界選手権の決勝に残ったことのなかった彼女ですが、アジア大会などでは優勝していました。しかし、彼女の中でアジア大会は国際大会という位置づけではない。彼女が言う国際大会は、五輪や世界選手権といった、あくまでも世界で争う戦いのみを指していました。何が何でも国際大会でメダルを獲るという高い意識と、強烈な欲を持っていたわけです。

 もう1つは、その目標を達成するために、私に何をしてもらいたいかという具体的な要望を持っていたことです。「私の指導を受ければ強くしてもらえる」というレベルではなく、私にメンタル面をサポートしてほしいという明確な要望があった。こんなふうに言われると、コーチとしてはとても指導がしやすくなります。

 このように彼女の意識のレベルは高く、要望も明確だったので、世界を目指す康介が率いるチームの中に、違和感なくすっと入ることができました。そしてアテネ、北京と2大会連続で銅メダルを獲得できました。そういう意味では、私も彼女に対して指導するストレスは全くありませんでした。私の出す練習メニューに妥協することもなかったからです(アテネ五輪後、メンタル面のサポートで苦労しますが…)。
 
 そんな礼子以上の意識の高さや貪欲さに感心させられたのが、海外の選手です。

 2009年7月に開催された世界水泳選手権ローマ大会男子50m平泳ぎで、南アフリカ共和国のキャメロン・ファンデルバーグ選手が世界新記録を樹立し、金メダルを獲得しました。その後の短水路(25m)の大会でも、50m、100mともに世界新記録を叩き出すなど、彼は次々と自身の記録を塗り替えました。

 この大会の数カ月前から私は彼の練習メニューを組み、メールや電話で指導していました。前々から、私のコーチとしての技術を世界に発信したいという思いは強く、海外の選手を指導して頂点に立たせることは1つの大きな目標でした。

 世界選手権では日本のヘッドコーチとして臨んでいたので、キャメロンの結果には少々複雑な心境でしたが、各国のコーチから「グッジョブ!」と声をかけられて世界から評価されたことは、素直にうれしかったし、コーチとしての自信になりました。

 そんなキャメロンの指導を通して見えてきたものは、日本人選手の特徴でした。今まで日本人選手には当たり前だと思ってやらせてきた練習メニューを、外国人に課すことで比較ができたのです。

 例えば、北島康介がこなしていた量より少ないメニューをキャメロンにやらせてみても、「キツイ」「デキナイ」と言ってこなせなかった。その“だらしなさ”を見ると、日本人の勤勉さや粘り強さを再確認します。逆に言えば、日本人が外国人の練習量を真似ても強くならないということも分かります。

 また、契約社会で生きている外国人選手は、コーチに求める役割がはっきりしている。キャメロンは、コーチである私に、自分が知らないテクニックや技術を補うことのみを求めてきました。

 世界選手権の時、レース前に少し練習を見る時間がありました。タッチの仕方などを少しアドバイスすると、「分かった、やるから見てくれ」と言う。自分にとってプラスになると思った時の貪欲さと集中力は本当にすごい。そして、強くなりたいという気持ちを表に出すのがうまい。「私の指導を受けたい」と南アフリカから自費で来日する彼の意気込みに心を打たれ、指導にもついつい熱が入ります。

 日本人は昔から感情をストレートに出すことは美徳ではないとされてきました。単純にそれが間違っているとは言えないし、素晴らしい文化です。でも、勝負の場面ではどうでしょうか。ここまで外国人選手の押しの強さを目の当たりにすると、日本人選手に「君たちはコーチに何を求めているのか」と言いたくなる。

 「平井先生に指導してもらったらきっと強くなれる」

 そんな漠然とした考えだけで、目的意識もなく指導を受けても、強くなれるわけがありません。中には、コーチをロールプレイングゲームに出てくる強力なアイテムのように勘違いしている選手もいます。実際、アイテムを持ってもそれで本当に自分自身が強くなったとは言えないし、アイテムの使い方が分からなければ宝の持ち腐れに終わる。

 選手はコーチに何を求めるのか、コーチは選手に何を求めるのか。それぞれの役割分担を明確にすることで、同じ練習内容でも得られるものは全く違ってきます。

 キャメロンを指導して、日本人選手たちにも、貪欲に強くなりたいという気持ちをアピールして我々コーチにぶつかってきてほしいと思いました。私だって、このコーチという仕事に人生をかけているのですから。

(※『突破論』より)

『突破論~世界で勝ち続ける秘訣、60の“金言”』
日経BP社、1470円(税込)

北島康介選手や中村礼子選手を2大会連続五輪メダリストに育て、伸び悩んでいた寺川綾選手をロンドン五輪で金メダルが狙えるほどに復活させた、競泳日本代表ヘッドコーチ平井伯昌氏の思考法が満載の一冊。結果が出せず、伸び悩んでいる選手を復活させるために、名将は何を考え、どのような指導をしてきたのか。選手のやる気と能力を引き出し、限界を乗り越えさせた育成論を、種目や性別、性格、年齢も違う選手たちの指導例からテーマ別に紹介していく。悩みながらもトライ&エラーで導き出した“平井式メソッド”は、アスリートだけでなく、ビジネスパーソンの教育・成長に役立つはずだ。


構成/高島三幸

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Profile
平井伯昌
平井伯昌(ひらい のりまさ)
1963年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、東京スイミングセンターに入社。アテネ・北京五輪の2大会で、北島康介選手に100m、200m平泳ぎで金メダル、中村礼子選手に200m背泳ぎで銅メダルをもたらす。北京五輪後、競泳日本代表ヘッドコーチに就任。2011年上海世界選手権で、北京五輪後から指導している寺川綾選手が50m背泳ぎで銀メダルを獲得。寺川選手のほかに、バタフライ日本記録保持者の加藤ゆか選手、自由形日本記録保持者の上田春佳選手といった教え子をロンドン五輪に送り込む。現在、『日経ビジネスアソシエ』で「平井伯昌の“金メダリスト”育成塾」 を連載中。新著『突破論~世界で勝ち続ける秘訣、60の“金言”』(日経BP社)を発売。平井レーシングチームのHPは⇒こちら/写真:(c)小川拓洋
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