• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

五輪・平井コーチの突破論「スランプ対策」

2012年8月1日

オリンピックコーチの金言「自分に対する絶対評価でスランプを乗り切る」

このエントリーをはてなブックマークに追加
Facebookでシェア

北島康介選手や中村礼子選手を2大会連続五輪メダリストに育てた日本代表ヘッドコーチの平井伯昌さん。

ロンドン五輪には、チームジャパンを、そして北京五輪後から指導してきた背泳ぎの寺川綾選手、

バタフライの加藤ゆか選手、自由形の上田春佳選手を引き連れ、メダル獲得に挑む。

性別も性格も能力も違う選手たちが壁にぶち当たった時、

平井さんはどのような考え方で乗り越えさせてきたのか。

世界で結果を出し続ける名将の思考法は、働く場面でも非常に参考になる。

平井さんの考え方を、8つの「名言」から紹介する。

自分に対する絶対評価で
スランプを乗り切る

 どんなに不調に陥ったとしても、大事な場面で必ず結果を出す人がいます。金メダリストの北島康介もそういうタイプの人間。なぜ結果を出せるのでしょうか。

 2009年11月末、東京スイミングセンターで開かれた招待公認記録会に、康介が出場しました。北京五輪以来の長水路(50m)のレースで、200m平泳ぎでは立石諒選手に負けましたが、50mと100mでは優勝。北京五輪後に休養し、短期間でよくここまで戻したなというのが私の率直な感想です。私が理想とする康介の滑らかな泳ぎは健在で、練習を見た時点から興奮してしまいました。

 北京五輪後、康介は米国に拠点を移し、約1年、自分なりに深く考えた末、レースへの復帰を選びました。2度も世界一になったにもかかわらず、再び世界を目指そうと決心するのは、並大抵のことではありません。なぜ、血を吐くような練習をしてまで再びレースの世界に戻ろうと思うのか、どこからそのモチベーションが湧くのか、不思議に思う人は多いはずです。

 彼からは純粋に競技を続けたいという思いが伝わってきます。アテネと北京の五輪を通じて、他人に勝ったことより、あのすさまじいプレッシャーと緊張感の中で自分に打ち勝ったことの方が、彼の中では大きな意味を成しています。やっぱり泳ぐことが好きで、自分自身に挑戦し続けたい。その思いがこの時の復帰につながったと思うのです。

 康介の場合、他人との比較という相対評価ではなく、自分に対する絶対評価から、自分自身、ひいては物事を捉えています。自分にとって価値があるのは、人と比較した評価ではなく、自分が頑張れたかどうか。周囲の影響など全く関係ないから、周りに流されないし、ダメだった時は周りのせいにしない。言い訳をしないから、次につながる課題を自分で見つけます。

 そんな考えができるからこそ、どんな状況にも流されることなく、自分のペースを貫き通せる。スランプに陥った時や、不利な状況に立たされた時でも、這い上がって周りが驚くような結果につなげます。

 この記録会での泳ぎを見た時、アテネ五輪後の康介を思い出しました。メダルを獲得後、モチベーションが上がらずに翌年の日本選手権で負け、入院するほどの病気やケガにも見舞われ、世間から「北島はもうダメだ」と言われた時です。

 北京五輪前になり、海外の高地トレーニングに行く予定でしたが、出発1週間前に康介は体調を崩して入院。私は初めて彼を日本に置いていくことにしました。私と一緒にやっていたコーチに彼の泳ぎを見てもらうことにしましたが、康介は初めて私と離れて思うようにいかない中、必死に自分で考えたようです。今までやってきたことを振り返り、泳ぎを見直しながら耐えていました。

 そして、私たちが合流した時、体の“つくりこみ”はまだまだでしたが、泳ぎのイメージは非常に良く、驚きました。康介は調子が悪く苦しい中で自分の頭で必死に考え、それなりに乗り越えたのだと感じました。苦しい時こそ真価が問われます。その時の感じと、この復帰戦はそっくりでした。

 苦しい状況でも心が折れることなく、康介が自分を追い込めるのは、絶対評価で自分自身を見つめているからです。そこに対して私は特に指導はしていません。ただ、「結果に対して言い訳はしない」「責任は常に己にある」という私が心がけてきた指導者としての姿勢を、彼は普段から感じ取っていたようでした。恐らく彼は常に、私が指導する内容だけでなく、「なぜ先生はこういう指示をするのか」と考えていたように思います。私も「どうしたら速くなると思う?」と問いかけ、選手が自分自身で考え、気づくように導いてきました。その結果が、「もっとできることはないか」「見落としている部分はないか」と自問自答しながら、自分の泳ぎを模索し続けることにつながったと感じます。

 この記録会の泳ぎは、渡米しても絶対評価を忘れず、まさに自問自答し続けてきた結果でした。そして、北京五輪前、本当に辛かった時に忍耐し、逃げ出さなかった経験が生きていると感じた瞬間でもありました。

(※『突破論』より)

『突破論~世界で勝ち続ける秘訣、60の“金言”』
日経BP社、1470円(税込)

北島康介選手や中村礼子選手を2大会連続五輪メダリストに育て、伸び悩んでいた寺川綾選手をロンドン五輪で金メダルが狙えるほどに復活させた、競泳日本代表ヘッドコーチ平井伯昌氏の思考法が満載の一冊。結果が出せず、伸び悩んでいる選手を復活させるために、名将は何を考え、どのような指導をしてきたのか。選手のやる気と能力を引き出し、限界を乗り越えさせた育成論を、種目や性別、性格、年齢も違う選手たちの指導例からテーマ別に紹介していく。悩みながらもトライ&エラーで導き出した“平井式メソッド”は、アスリートだけでなく、ビジネスパーソンの教育・成長に役立つはずだ。


構成/高島三幸

この記事をSNSにシェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加
Facebookでシェア

この記事は役に立ちましたか?
働く女性のための「日経ウーマンオンライン」最新記事のお知らせを好きな方法で受け取れます。

  • メールアイコン

    11万2千人

    無料メルマガを購読する

Facebookコメント

※Facebookのコメント機能は、Facebookのソーシャルプラグイン機能を用いて実現してい ます。本機能、およびコメントの内容について、日経ウーマンオンラインは一切の責任を負い ません(日経ウーマンオンラインからのコメントを除く)。また、コメントを非表示にしたり、機能を停止することがあります。

Profile
平井伯昌
平井伯昌(ひらい のりまさ)
1963年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、東京スイミングセンターに入社。アテネ・北京五輪の2大会で、北島康介選手に100m、200m平泳ぎで金メダル、中村礼子選手に200m背泳ぎで銅メダルをもたらす。北京五輪後、競泳日本代表ヘッドコーチに就任。2011年上海世界選手権で、北京五輪後から指導している寺川綾選手が50m背泳ぎで銀メダルを獲得。寺川選手のほかに、バタフライ日本記録保持者の加藤ゆか選手、自由形日本記録保持者の上田春佳選手といった教え子をロンドン五輪に送り込む。現在、『日経ビジネスアソシエ』で「平井伯昌の“金メダリスト”育成塾」 を連載中。新著『突破論~世界で勝ち続ける秘訣、60の“金言”』(日経BP社)を発売。平井レーシングチームのHPは⇒こちら/写真:(c)小川拓洋
関連キーワードから記事を探す
コミュニケーション術お仕事術

Topics

CloseUp

WOL Selection

PAGE TOP

ログインしていません。

  • ログイン
  • 無料会員登録

Pickup

Focus

最新刊のご案内

仕事を楽しむ 暮らしを楽しむ日経ウーマン 12月号

もっと健康に、もっと美しく日経ヘルス 12月号

働くママ&パパに役立つウェブマガジン日経DUAL 11月号

一生お金に困らない!お金がどんどん増える本 ミニサイズ新装版

まんがで分かる!やせる食べ方

日経ウーマンオンライン おすすめの本

日経ウーマンオンライン

広告をスキップ