「超○○」「ヤバイ」「大根を切ってあげて」――これらの若者語や幼稚な丁寧語は、
耳にすると眉をひそめる一方、自分でも気付かないうちに口にしていることが多い。
若者ならば許されても、大のおとなが使うと恥ずかしい言葉はどれか。
日本語と若者分析のエキスパートにジャッジしてもらった。
バブル時代の“申し語”!?
「私って料理が苦手じゃないですか」
「これって便利じゃないですか」
砂川ジャッジ / △
相手も自分も知っている内容について、「我が社のコンセプトは○○じゃないですか、だから……」と使うのは間違いではない。「問題なのは、相手が知るはずのない情報なのに『私って、料理が苦手じゃないですか』という使い方。知っていて当然というニュアンスで同意を求めるのですが、相手は『あなたのことなんて知るわけがないでしょ』と腹が立つこともある。押し付けがましく、自分勝手な印象を与えるので、好ましくないでしょう」。
「超楽しい!」「超おいしい!」
■ちょう【超】
〔形容詞・形容動詞に冠して〕その程度が甚だしいことを強調する。非常に。
【表現】近年若者の間で使うようになった俗語的な言い方。
※明鏡国語辞典
砂川ジャッジ / ×
若者語としては「超楽しい」「超かっこいい」というように「超+形容詞、形容動詞」で使われる。カタカナで「チョー」と書かれた時代もあった。「『超特急』『超高層ビル』のように『超+名詞』で使う分にはOKです。『超+形容詞、形容動詞』を公的な場で使うのは好ましくありません」。
「っていうか、こんな感じじゃないですか?」
■というか【(と言うか)】
〔連語〕▼「っていうか」「っちゅうか」「てか」「つうか」はくだけた言い方。
【表現】最近の若者ことばでは相手の言うことを受けて話題をずらすのに用いられることがある。
※明鏡国語辞典
砂川ジャッジ / △
相手の発言を打ち消すように、自分の発言の冒頭に使う人が多い。「口癖になっている人がいます。話題を転換したいなら『それより』や『そういえば』を使えばいいのですが、はっきりしすぎる印象を与えるのが嫌なのでしょう。相手に配慮せず気ままに話しているようで、子どもっぽい印象を与える恐れがあります」。本来は『Aっていうか、Bっていうか』というように自分の言葉を吟味して、よりよい表現を探すときに用いる言葉だ。
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深澤ジャッジ / △
「○○じゃないですか」や「っていうか」などが使われ始めたのはバブル期だという。「バブル世代の特徴が言葉にも表れています。『〇〇じゃないですか』は、誰も聞いていないのに自分語りをする『自分好き』な人が使います。自分のことを相手に知ってほしい寂しがりやでもありますね。『っていうか』は相手の機嫌を損ねないようにしつつ、相手の言ったことを否定できる便利な言葉。負けず嫌いなバブル世代の気質が見え隠れしています」。

砂川有里子さん
1949年、東京都生まれ。大阪外国語大学大学院外国語学研究科修了、博士(言語学)。専門は日本語学と日本語教育。『明鏡国語辞典』編集委員を務めるほか、『問題な日本語』(大修館書店)では、若者語を中心に執筆している。

深澤真紀さん
1967年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部社会専修卒業。書籍・雑誌・ウェブの企画、執筆などを行う。「草食男子」「肉食女子」の命名者として知られる。著書に『思わず使ってしまうおバカな日本語』(祥伝社新書)など。
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