9月某日、都内の酒場に集まった4人の女たち(編集者+ライター+読者エディター2人)の鼻息は荒かった。熱燗片手に熱っぽく語る彼女たちの共通点は、アラサーからアラフォーに差し掛かる年頃で「未婚・彼氏なし」。合コンや異業種交流会、お見合いなど数々の出会いの場に参戦するも、思うような成果は出ていない。悶々とした思いを語り合い、打開策を練ろうとする4人にこの夜、天啓が……! ナンパスポットに乗り込むのだ。そこには出会いがある。……ならば、まいりましょう。まずは、都内随一のナンパスポットとして名高い、銀座コリドー街へ。

■じっとしていても何も始まらない! アグレッシブに恋活スタート

 1週間後の金曜の夜、再び集結した4人。前回よりも明らかに気合いの入ったファッションとメイクで臨戦態勢だ。

 いい年をしてナンパ狙いはイタイ? いやいや、出会いの手段に優劣なんてない。ナンパ・逆ナン上等! 大切なのは誰に出会うかであって、きっかけはどうあれ構わない。『SEX and the CITY』のごとく全身全霊で突き進もう。まずは景気づけにビールをあおりながらの作戦会議だ!

「銀座コリドー街近くの300円バーは、ナンパスポットとして鉄板らしいよ。最近友達と2人で行ってみたんだけど、結構声をかけられた。友達はそこで出会った人と今でも食事に行っているみたい」

「それなら、まずは300円バーに行こう。4人だと動きにくいし声もかかりづらいだろうから、随時2人とか1人に分かれて行動しようか」

「もしもいい出会いがあったら、他のメンバーを気にせず消えてもいいってことにしない? 事後報告さえすれば、遠慮なく突っ走ってOK」

「いいね。むしろ、その展開を目指そうよ!」

「ところで……私たちまだ知り合ったばかりでお互いのことをよく知らないわけだけど、それぞれどんな人がタイプ?」

 ここでシェアされた4人の恋愛傾向は、以下の通り(SATC風ニックネームでご紹介)。

マリリン…34歳・OL。バーや道端でのナンパなど、予期せぬ出会いを引き寄せる力がある。語学が堪能な人に魅力を感じる傾向があり、相手が帰国子女と知るや株が急上昇してしまう。今井翼のような濃い顔の男性が好み。

キャシー…35歳・PR。気になった人には連絡先入りのプレゼントを渡すなど、恋愛への姿勢は積極的。好きになると一途で、失恋後には3日間なにも食べられなかったこともある。藤原竜也のようにセクシーな声の人がタイプ。

ナオミ…35歳・ライター。長らく干物女だが、かつては直感猪突猛進型。お見合いに挑戦するも、恋愛感情もないままに結婚を考えるというクールな展開が腑に落ちずこじらせる。又吉直樹のように飄々とした雰囲気の人が好き。

ドロシー…28歳・編集者。長身・イケメン・32歳以下の3条件を満たさないメンズは恋愛対象外。ハードルが高すぎるがゆえに恋に発展しにくいが、いざ惚れてしまえば猛然とプッシュ。溝端淳平のようなかわいい系男子が大好物。

 出会いを求めるポジティブな気持ちは共通しているものの、恋愛観や好みのタイプは4者4様。そんな4人のメンバーで、ナンパの聖地へといざ出陣!

■人気ナンパスポットで体感した野性味あふれる駆け引き

 まずやってきたのは、オール300円の立ち飲みバー。21時頃に入店すると、すでに店内は盛況。人波に押されながらフロアを観察していると、マリリンとキャシーが男性グループからテーブルに招かれ、みんなでに飲むことに。

 リーダー格は、近くで不動産関係の仕事をしているという37歳の椎名桔平似。少なくとも週に1回、多いときには週に4回も来店しているのだと言う。

「この店には2種類の女性が来るんだよ。本気で付き合える恋人を探している人と、後腐れのない遊びを求めている人。ちなみに、どっちなの?」

 さすがは有名ナンパスポット、話が早い。しかし残念ながら、誰一人としてまったく胸キュンセンサーに響いていない様子…5分もしない内にテーブルを離れた。

 その後、何人かの男性とのキャッチ&リリースを繰り返す4人。次第に「キャッチする・される」にはあからさまなコツがあることが見えてくる。この場所では「声を掛ける」以前に、露骨なアイコンタクトで駆け引きが行われているのだ。

 男女を問わず、この店にいる人たちの目はとにかくギラギラしていて、遠くからもすれ違いざまにも強烈な視線を投げかけ値踏みあっている。互いのギラギラがまじわったときに、視線で「アリ」の意思を示しあうことができればナンパは成立したようなもの。そもそも視線が合わない人やサッとそらす人、醒めた目の人には「ナシ」と見なされている。

 ここは、野性的なノンバーバルコミュニケーションが高密度で飛び交う狩場なのだ。

 ターゲットとなるか否かは見た目で判断するしかないわけだが、特に女性へのハードルはさほど高くない模様。もちろん、いかにも若いオシャレ美男子の眼中に入っていないことは自覚していたし、20代前半と思われるキラキラ美女はチヤホヤされていた。

 しかし、声を掛けあうきっかけは「ひとまず軽く立ち話しよう」というライトなもの。男女ともにハードルは低く……というよりも、ほぼ無差別的に網を投げるハンターも少なくないため、大多数の人に最低保証とでもいうようなニーズがあるのだ。

 いつの間にやら22時。入店を待つ行列が長く伸びて、店内はいよいよ満員電車状態に。そのとき、長身で瑛太似の20代半ばらしきイケメンがあらわれた。

 「声をかけてみる!」と、勇ましく近づいていくドロシー。しかし、強力すぎるその眼光が瑛太に届いていないはずはなく、しかも彼の視線がこちらを向くこともない。そればかりか、店の逆サイドへ回り込むようにシレッと移動をはじめてしまった。ドロシー撃沈…。ここぞとばかり酒を飲む。いや、こんなことで凹んではいられない。

 見るからにモテそうな男前とはいえ「簡単に一緒に飲めると思うなよ」と言わんばかりの感じの悪さ。さすがに愛想をつかし、そして、厳しい現実を目の当たりにもして、一行は300円バーから退散した。