近年注目されている物事を論理的・客観的に理解するための思考法「クリティカルシンキング」。今から始められる「思考のクセ」の付け方を、変革実現のサポートと変革リーダーの育成に携わるチェンジウェーブ代表、佐々木裕子さんに、「日経WOMAN Networkingフォーラム プレミアム2015」で教えていただきました。

佐々木裕子(ささきひろこ)
チェンジウェーブ代表
チェンジウェーブ代表
東京大学法学部卒。日本銀行を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。シカゴオフィス勤務の後、同社アソシエイトパートナーとして8年間強の間、金融・小売・通信・公的機関など、数多くの企業の経営変革プロジェクトに従事。退社後、株式会社チェンジウェーブを創立し、変革実現のサポートと変革リーダー育成に携わる。傍ら、自らの出産と同時に、子どもの可能性を引き出す託児サービス“creche bebe”を立ち上げる。

 近年、ビジネスの世界で重視されている、物事を論理的・客観的に理解するための思考法「クリティカルシンキング」。「女性は上手に論理的な説明ができないとよく言われますが、それはウソ。単にそういう技術を訓練していないだけです」と語るのは変革実現のサポートや変革リーダーの育成に携わるチェンジウェーブ代表、佐々木裕子さん。

 ただ、「男性は社会に出ると論理的に筋が通っていない思考にダメ出しをされ続け、絶え間なく“筋トレ”を続けるのですが、女性は直接そうしたダメ出しをされることが少ない。男性に比べ論理的思考を培う“筋トレ”ができていないため、そうした風に思われてしまう傾向にあるのです」と佐々木さんは話します。

 クリティカルシンキングを身に着ければ、次のことを実現できると言います。


1.限られた時間・情報の中で、効率的に結果を出せる仕事をする

2.自分に経験値のない分野でも、部下などに対して自分の考えを論理的に説明する

 では、これを身に着けるにはどうしたらいいのか。大事なのは、物事を考える時、「いつまでに」「どこまでいきたいか」という目指すものと時間軸を明確にすることだと佐々木さんは指摘します。

 「ビジネスだけでなく、結婚、出産など、人生のあらゆる場面で目指すものと時間軸を明確にイメージすることは重要です。目指すものを明確にすれば、現在と目指すものとのギャップが具体的になる。すると、なぜそのギャップが生じているかを分析することができ、それを埋めるためにはどうすればいいかという具体的方策を考えることができるのです」(佐々木さん)。

石川遼選手も「クリティカルシンキング」で目標達成

 例えば、プロゴルファーの石川遼選手は、小学校の卒業時に1、2年ごとにどんな大会でどういう成績を収めたいかを明確にプラニング。20歳でアメリカの重要な大会での優勝を目指すという目標を決めていたそう。

 これに対して、例えば「女性の活躍を推進したい」という企業は、「女性がより活躍する会社」を目指すと目標定義をし、それを実現するための策が「他社で活躍する女性ビジネスパーソンと話をする、長時間労働の見直し」などというような施策を議論しがち。

 でも、「“女性がより活躍する”とは具体的には何が目標なのか。“女性”といっても管理職を増やしたいのか、会社全体で女性比率を上げたいのか、管理職とはどのレイヤーのポジションのことを言っているのか。求める目標によって、その対策は全く異なってきますから、ここを明確にしなくてはいけない。そもそも、何のためにそれをやりたいのかも明確に議論しきれていないことが多いのです」(佐々木さん)。

 「物事を考える時には、まず目指すものを明確に定義する力が必要で、これができることで自分自身をコントロールし、周りの人を動かすことができる」と佐々木さんは強調します。