衰えない体のために欠かせないたんぱく質を、どうとれば最も効率的なのか。ポイントは食べる量とタイミング、そして食事の組み合わせだ。

 「たんぱく質は糖質や脂肪に比べて消化に時間がかかる。そのため、必要な部位に届くのも遅い」とたんぱく質に詳しい神奈川工科大学の佐々木一教授。その点を考慮すると上手なとり方が見えてくる。

 特に大切なのは朝食だ。20代女性では朝食欠食率が2割を超えているという報告がある。「筋肉は常につくり替えられているので、筋肉が再合成されるとき、材料となるアミノ酸が不足しないことが重要。1日のうち最も空腹時間が長い起床時は、このアミノ酸が不足の状態。朝食でたんぱく質をとることは、筋肉の維持にもつながる」(藤田教授)。また、様々な食材からたんぱく質をとることでアミノ酸のバランスに偏りがなくなる。運動後にとるなどのタイミングも重要だ。

 「肌のハリに必要なコラーゲンの合成にはビタミンCが必要。ビタミンB群やA、D、Eなども一緒にとることを薦めている」とアンチエイジングの美容医療に詳しい青山エルクリニックの杉野宏子院長は話す。

たんぱく質を上手にとるポイント1

1日3回に分けてとるダイエットにも朝食は大事!
「同じ運動をしても朝食時にたんぱく質が不足していると筋肉の肥大率が低く、足りていると筋肥大率が高いということがわかっている」(藤田教授)。ダイエットのために筋肉を増やしたい人にとっても、朝食は重要。

47都道府県に在住する30~64歳の女性6190人の食事内容を調査。筋たんぱく質合 成のタイミングで不足しないように、たんぱく質を朝、昼、晩に均等にとることが理想 的とされるが、実際は朝が少なく、晩が多いことが分かった。(データ:Geriatr Gerontol Int,2018 doi:10.1111/ggi.13239より引用、改変)
47都道府県に在住する30~64歳の女性6190人の食事内容を調査。筋たんぱく質合 成のタイミングで不足しないように、たんぱく質を朝、昼、晩に均等にとることが理想 的とされるが、実際は朝が少なく、晩が多いことが分かった。(データ:Geriatr Gerontol Int,2018 doi:10.1111/ggi.13239より引用、改変)

たんぱく質を上手にとるポイント2

運動したら早めにとる!
「強度の高い運動を行うと、筋たんぱく質は分解される。しかし、運動直後にはたんぱく質の合成はより促進される」(藤田教授)。この際、体内のアミノ酸が不足していると修復が間に合わないので、たんぱく質、またはアミノ酸の補給が大切。運動後の筋たんぱく質合成のピークは運動終了から2時間後、3~4時間後まで続くという。

たんぱく質を上手にとるポイント3

肉・魚・大豆など複数の食材からとる
たんぱく質合成に必要な必須アミノ酸9種類をバランス良く含む「アミノ酸スコアが100」の食品であっても、同じものばかりを食べていれば、体内のアミノ酸バランスに偏りが生じ、脂肪として蓄積する分も増える。「植物性たんぱく質と動物性たんぱく質をバランスよくとるのが理想」(森准教授)。

食べたたんぱく質をムダなく使うにはカロリーとビタミンの不足 に注意

食べたたんぱく質を筋肉や肌などの体づくりに生かすには、その他の食事や運動も大切。しっかり働かせる“相棒”についても知っておこう。

たんぱく質を生かす条件1

野菜は必ず一緒にとる
アミノ酸をたんぱく質に再合成する際に、ビタミンB群は欠かせない。また、肌を支えるコラーゲンにはビタミンC、骨にはカルシウム、ビタミンDといった補酵素がなければたんぱく質として活かすことができない。「ビタミンやミネラルを含む 野菜を一緒にとることが大切」(杉野院長)。

たんぱく質を生かす条件2

運動することで筋肉はつきやすくなる
筋肉の維持のためには、やはり運動が大切。加齢によって筋肉の合成を促す作用も衰えるが、「普段から運動する習慣がある人とない人とでは、ある人のほうが同じたんぱく質を摂取した際の筋たんぱく質の合成が高い」(藤田教授)。筋肉維持のためには、たんぱく質と運動習慣が欠かせない。

たんぱく質を生かす条件3

たんぱく質だけに偏らず、カロリー不足にならないように食べる
体にとって最も大切なのは、生きるためのエネルギー作り。「実は、空腹を感じた段階で、エネルギー産生のため、筋肉の分解は始まっている」(藤田教授)という。糖質や脂質オフのダイエットをしている人や野菜ばかり多く食べている人は要注意。

この人たちに聞きました
藤田 聡教授
立命館大学スポーツ健康科学部
にて修士課程修了、南カリフォルニア大学大学院にて博士課程修了。テキサス大学医学部加齢研究所研究員などを経て2011年より現職。運動生理学、運動や栄養摂取による代謝系の変化を専門に研究する。

杉野宏子院長
青山エルクリニック(東京都・港区)
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部形成外科講師などを経て、2003年より現職。「リフトアップ外来」を開設し、顔のたるみに対する最新治療を提供。食事面なども含めて指導を行う。「肌のためにはたんぱく質以外に鉄、亜鉛などのミネラルも重要」。

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