夏のイベントになにかと活躍する浴衣。しかし、平凡にならず、適度な華やかさを保った大人の着こなしは実は難しいもの。モダンな浴衣スタイルについて、ファッション・ジャーナリストの宮田理江さんに解説していただきました。

水金地火木土天冥海 2016浴衣コレクション
水金地火木土天冥海 2016浴衣コレクション

 ガーリーに見えやすい浴衣だが、近頃は大人っぽく着られるタイプも増えてきた。日本のデザイナー、作家のハンドメイド物に強みを持つセレクトショップ「水金地火木土天冥海(スイキンチカモクドテンメイカイ)」が提案する浴衣のコーディネートはノスタルジーとモダンが響き合うようで、平凡な浴衣ルックに差をつける。真夏のお出かけシーンに和風ドレスアップを楽しめる新・浴衣コーデのポイントを見ていこう。

絵になる浴衣、「はんなりとした女性」

妙に明るすぎない、やや渋めの色味を選ぶと、全体が落ち着くうえ、顔や肌がクリーンに映る(水金地火木土天冥海 2016浴衣コレクション)
妙に明るすぎない、やや渋めの色味を選ぶと、全体が落ち着くうえ、顔や肌がクリーンに映る(水金地火木土天冥海 2016浴衣コレクション)

 「大人らしい浴衣姿」の風情は「色」で決まる。妙に明るすぎない、やや渋めの色味を選ぶと、全体が落ち着くうえ、顔や肌がクリーンに映る。こちらは松の木の根をいぶした煤(すす)で染めた。色数を抑え、静かな花柄を散らしてある。

 帯は沖縄に伝わる技法「みんさー織り」で織り上げられた半巾帯。民芸的な色・模様がナチュラル感を添えた。

 古着物を仕立て直した日傘はほのかなヴィンテージ感を漂わせる。帯に差した小物入れも、着物としての役目を終えた生地を生まれ変わらせた。こういった着物由来のアイテムは格上ムードを醸し出す小物として添えたい。大きな牡丹の髪飾りは帽子のようなボリュームがあり、浴衣姿をぐっとグラマラスに仕上げている。

夏らしいブルー系をキーカラーに、好相性の白や赤をミックスすれば、フレッシュな風情に整う(水金地火木土天冥海 2016浴衣コレクション)
夏らしいブルー系をキーカラーに、好相性の白や赤をミックスすれば、フレッシュな風情に整う(水金地火木土天冥海 2016浴衣コレクション)

 渋め路線が苦手なら、涼やかイメージにまとめあげよう。夏らしいブルー系をキーカラーに、好相性の白や赤をミックスすれば、フレッシュな風情に整う。この配色は割と多くの人が取り入れるので、当たり前に見せないためには、柄や小物使いで工夫が欲しい。

 青い奥州小紋は濃淡があって、装いに深みを生んでいる。薄茶の紬のような生地が柄を引き立てる。髪飾りと帯に使った赤系の差し色が利いている。

 帯は小千谷縮(おぢやちぢみ)の兵児(へこ)帯、無造作っぽく巻くだけで様になるから、窮屈に見えにくい。リボン風に結んだ絹糸の髪飾りは花びらに光沢があり、浴衣姿に貴重なつやめきを添えている。波縞をあしらったがま口も風雅な彩りが装いにリズムを刻んだ。