トップブランドのドレスで気分が高揚
劇中ではトップブランドの「CHANEL（シャネル）」が衣装協力している。老舗の「Cartier（カルティエ）」も登場する。初めのうちは我慢していたモウリーンだが、やがて顧客のワードローブをひそかに着るようになり、ショップでの試着でもまるで自分の服を選ぶかのように振る舞い始める。おしゃれの目利きだけあって、実際にドレスアップしたらよく似合う。やがて彼女は普段着姿とドレスアップという「二人の自分」を演じ分けるような感覚に陥っていく。
服を替えるだけで気分が盛り上がり、表情や仕草まで変わっていく。人の心を刺激する「服の力」を感じさせる映像だ。序盤と比べると、彼女の選ぶ服のデザインが心なしか派手めに変わっているように感じられる。まとう喜びを知って、顧客にもそれを伝えようとするかのように、まばゆい装飾を施した服や、ボディーラインを強調した服を選ぶモウリーン。オンとオフ、普段着とゴージャス服の切り替えで女性が美しくなることを、彼女は劇中の着姿で示している。
ドレスアップは「自分の柄じゃない」と、敬遠している人もいる。だが、たまには意図的に着飾る日を持たないと、いつまでもおじけが消えない上、着こなしの腕も上がらない。誕生日やクリスマスなど、年に数回だけでも「本気のおしゃれ」をする日を決めておけば、徐々に苦手意識が和らぐ。慣れの問題は大きいので、自分から機会を増やす取り組みを心掛けたい。
映画ではモウリーンがパリとロンドンを行き来し、さまざまなハイブランドのショップを訪ねる。ただ、単にラグジュアリーなファッションを紹介する内容ではなく、基本線は心理ミステリーで、亡き兄とのつながりを探し続ける彼女の内面の葛藤が全体を貫いている。その心理的ざわめきにファッションが絡み合って、女性の気持ちと装いの密接な関係が描き出されていく。
カジュアルで動きやすい普段着と、あでやかでフェミニンなおめかし服を程よく使い分ければ、日々のスケジュール自体にも抑揚が生まれる。自分の魅力に気付く上でも、「たまのおしゃれ」は意味が大きい。
(C) 2016 CG Cinema - VORTEX SUTRA - DETAILFILM - SIRENA FILM - ARTE France CINEMA - ARTE Deutschland / WDR
配給：東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
5月12日（金）、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開
URL：http://personalshopper-movie.com/
文／宮田理江
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