“恋バナ収集ユニット”桃山商事の清田代表と森田専務が、恋愛の悩みに効く1冊を紹介していく新感覚のブックガイド・桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」! 今回は番外編として、『男が働かない、いいじゃないか!』の著者であり、男性学の専門家である武蔵大学・田中俊之先生と語り合います。

『男が働かない、いいじゃないか!』
(著=田中俊之/講談社+α新書)

恋愛の問題と男性の働き方問題は根底でつながってる!?

清田代表(以下、清田) 普段はブックレビュー形式の桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」ですが、今回は番外編として、“男性学”が専門の社会学者・田中俊之さんをお招きし、恋愛の諸問題について男性学の見地からうかがってみたいと思います。

田中俊之(以下、田中) よろしくお願いします。

清田 我々は普段、恋に悩める女性たちの話を聞き、そこで感じたことをコラムやラジオで発信するという活動をしているのですが、彼女たちが口を揃えて言うのが「男ゴコロがよく分からない」ということです。

田中 桃山商事さんの旧連載「恋愛における男ゴコロ談義」にも、そういったお悩みが数多く寄せられていましたね。

清田 そうなんです。田中先生は著書の中で、男性学を「男性が男性であるからこそ抱えてしまう悩みや葛藤に着目する学問」と説明されていますが、ここには男ゴコロを読み解くためのヒントがつまっているような気がしています。

森田専務(以下、森田) 『男が働かない、いいじゃないか!』は、男性の働き方を見つめ直そうと訴えた本でした。例えば桃山商事に寄せられる女性たちからの恋愛相談にも、連絡の頻度が落ちたり、結婚の話し合いから逃げたり、夫婦の問題と向き合わなかったりする男性たちがよく登場するんですが、そういった問題と、男性の働き方に関する問題は、根底でつながってるような気がします。

佐藤広報(以下、佐藤) 桃山商事ではときどき男性にも恋バナ取材をすることがあるんですが、「どう思いますか?」「どんな気持ちでしたか?」という感じでその人自身の内面について質問をしても、「よく分からない」って答えが返ってくることが本当に多い。これは私もそうなんですが、男自身も男ゴコロをよく分かってないのかもしれません。

田中 そうですね。男性は「弱音を吐くな」と育てられるため、自分の抱えている悩みや生きづらさに鈍感です。ましてや、その背景に「長時間労働」や「ジェンダー的な抑圧」といった問題が関わっていることなど、まだまだ意識すらされていないと思います。

清田 男は自分自身のことが分からない、だから女性も男のことが分からない、と……。

森田 我々としては、相談者さんのモヤモヤが晴れるようなアドバイスを送りたいと思っているのですが、彼女たちの話を聞いている限りでは相手男性に問題を感じることがほとんどなので、どうしても話が男を責める方向に行ってしまう。

佐藤 私たち自身も男なので、自己反省を含めて男性側の問題点をあぶり出していくって感じだよね。

森田 でも、そうやって男を責めるだけだと、女性の怒りや悲しみをさらに煽り、男女の溝をますます深めてしまうのではないかというジレンマも正直ある。

清田 そこを男性学では、「その男がクソだ!」と“個人”の問題に回収せず、「背景にある社会構造に目を向けてみましょう」と“社会”の問題として捉えていくじゃないですか。桃山商事としても、こういった視点を学んでいけたらと思っています。