左右の二分法は恋愛にどう役立つのか

■「すべて左翼」「すべて右翼」ではない

 さて、ここまで『フード左翼とフード右翼』に学びながら、恋愛の様々なシーンを左右の判断軸で捉え直してきました。最後に、恋愛にこの二分法を適用してみることの意味を考えていきたいと思います。

 まずこれは、「こういう人は左翼」「このタイプは右翼」と恋愛観をマッピングするためのものではありません。では何かというと、「自分の価値観を細かく把握し、とかく曖昧な“相性”というものの正体をつかむため」に有用なツールになり得ると思うわけです。

 これまで見てきたように、恋愛(というか人間関係全般)には様々なシーンがあり、それぞれに左右の傾向が存在します。もちろん「左派の人はすべて左」「右派の人はすべて右」という話ではありません。我が身を振り返ってみても、結婚観やセックス観は左翼的ですが、食の好みや人づきあいはどちらかというと右翼的です。大抵は個人の中に左と右が混在しているはずです。

 このように、まずは自分の価値観を細分化し、それぞれを「左右どちらかな?」と改めて眺めてみるとおもしろいと思います。

■とかく曖昧な“相性”の正体とは

 そうやって価値観を細分化して把握できると、今度は相手との“相性”が具体的に見えてくるように思います。

 誰かと関係を続けていくためには基本的に価値観のすり合わせ(=チューニング)が大事になってくると思いますが、その幅が広ければ広いほど、かかる労力が上がっていきます。相性というと“感覚的”で“先天的”というイメージがあり、なかなか捉えどころのないものに思えますが、要するに相性とは「チューニングの幅」の問題であり、「合わせるのが大変=相性が悪い」「合わせるのが楽=相性が良い」ということです。

 自分と同じ人間なんていないのだから、価値観のすれ違いなんてものは「あって当たり前」のものでしょう。だからすれ違うこと自体は問題ではないと思いますが、厄介なのは、「それが具体的に何の相違で、どれくらい食い違っているのか」がわからない場合です。

 これを正しく把握できないと、適切な対処ができません。例えば旅行で揉めたカップルは、これを「旅行観の違い」と把握できず、「性格全般の食い違い」と捉えてそのまま別れに至ってしまいましたが、もしかしたらこれは、単に「旅行を避ける」という方法で対処できた問題だったかもしれません。

■すり合わせ可能な相違、譲れない相違

 ただし、左右の違い(=思想信条の違い)というのはつまり、“当たり前”のラインがズレているということであり、これに目をつむるのは結構しんどいことだと思います。

 旅行プランのすれ違いも、ただの「わがまま」や「面倒くさがり」という話ではなく、思想信条に関わる重要な選択や決断といったレベルのすれ違いだったとしたら……これはやはり、互いに譲ることは難しかったはずです。

そういう意味では、別れという結果は、むしろ二人にとっていいことだったかもしれません。その状態で関係を続けていく方が、絶対に苦しいはずなので(少し話は逸れますが、震災の後に離婚が増えたのも、それによって譲れない価値観の相違があぶり出されてしまったからかもしれません)。

 とにかく、譲れないと判断するにせよ、チューニングを試みるにせよ、まずは自分と相手の価値観を細分化して把握してみることが大切だと思います。厳めしい語感が玉にキズですが……左翼/右翼という二分法はそれを把握するための便利なツールになり得ると思うので、本書を参考に、ぜひトライしてみてください!

文/清田代表(桃山商事)

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