“恋バナ収集ユニット”桃山商事の清田代表と森田専務が、恋愛の悩みに効く1冊を紹介していく新感覚のブックガイド『桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」』!

今回のお悩み
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そんな悩みに効く1冊

食における“左翼”“右翼”とは?

■「食と政治意識」の関わりを描く

 こんにちは、桃山商事の清田です。今回は速水健朗さんの著書『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』を取り上げてみたいと思います。

 本書は現代社会における「食と政治意識」の関わりを分析した論考です。

 政治というと難しそうなイメージを抱きますが、カバーにある〈「食べるものを選ぶ」それだけで政治思想がわかる〉というコピーが示す通り、“食の好み”からその人の政治意識を探るという、誰にとっても身近な切り口がこの本の魅力です。

 そんな本書が、恋愛とどう関係しているのでしょうか。

■健康志向の「フード左翼」とジャンク志向の「フード右翼」

 本来、食の好みとは「千差万別」としか言いようのないものかもしれません。食材、味つけ、食べ方、メニューにジャンル……などなど、好みはいくらでも細分化できるからです。

 しかし著者は、ここに1本の太い線を引きます。日本人を「食にお金をかけることを厭わない人々」と「安全よりも安さと量を重視する人々」に分け、前者を“フード左翼”、後者を“フード右翼”と命名。そして、それを元に「日本人の食にまつわる政治意識」をあぶり出していきます。

 食における左翼と右翼とは何か。まずはこの表をご覧ください。

※本書帯を参考に作成
※本書帯を参考に作成

 いかがでしょう。これだけでも何となくイメージはつかめると思います。本書にはより詳しいマッピングがなされていますが、ごく簡単に言えば、「健康志向」で「地域主義」を重んじるのが左派で、「ジャンク志向」で「グローバリズム」傾向にあるのが右派となります。

■「食の産業化」に対するスタンスの違い

 では、こういった食の好みは、個々の政治意識とどう関係しているのでしょうか。元来、右翼は「保守的」「既存の道徳重視」「自由経済志向」を、左翼は「革新的」「人権重視」「平等な分配重視」を意味する言葉ですが、食の好みにおいてその違いが最も色濃くあらわれるのが、「食の産業化」に対するスタンスだといいます。

 現在の社会は「資本主義経済」を原則にまわっています。そこでは競争や利潤の追求といったものが志向され、その中で起こったのが「食の産業化」です。商品が工場で量産されるイメージを思い浮かべるとわかりやすいと思いますが、同じモノを一か所で大量に作り、化学肥料や遺伝子組み換え技術などで生産効率を上げ、値段を下げる──。食品をこのように生産していくのが食の産業化です。

 それに従順なフード右翼に対し、食の産業化に疑問を持ち、反対する立場の人々がフード左翼となります。

 安全性のみならず、フェアトレード、環境や労働者への負荷といった要素なども考慮しながら食べるものを選択していきたい、というのが左派の基本姿勢です。