なぜ誠子さんと渚さんはコンビになったのか

 誠子さんが怒濤(どとう)の「ブスいじり」に力強く切り返していく芸風を確立したルーツは、その生い立ちにあります。彼女には妹が二人いるのですが、どちらも見た目は誠子さんにあまり似ていません。妹たちは姉である誠子さんのことを「シュレック」と呼び、見下してきました。家庭内でも誠子さんだけはずっと無視されているような状況だったそうです。二人に外見からセンスまで何もかも否定され続けて、誠子さんは精神的に追い込まれていました。そこで、彼女たちを見返すためにお笑いの道へと進んだのです。

 そんな誠子さんは、どんなにいじられてもへこたれない、ポジティブ思考のブリッ子キャラを確立しました。どんな悪口を言われても断固として否定し続けて、底抜けに明るい笑顔を見せる。たとえ男性芸人に面と向かって「ブス」と言われても、「ごめんなさい、私も正直タイプじゃないです」などと答えたりする。そういう切り返しの技の種類が豊富で、一つひとつの威力もあるのが芸人としての強みです。家庭では生意気な妹たちに虐げられ、鬱屈した思いを抱えていたからこそ、そういう芸風を確立することができたのでしょう。

 しかも、渚さんは今の誠子さんのポテンシャルを引き出すのに最高の相方でした。ヤンキー気質の渚さんが誠子さんを容赦なくこき下ろしても、渚さんも誠子さんに負けないくらい個性的なので、キャラクターの強い人同士が対等な関係でじゃれ合っているというふうに見えるのです。二人がキャラクターも性格も全く違うからこそ、交わるところがなく、お互いをどこか突き放して見ている感じが面白いのです。

 誠子さんは自身の明るい部分を表に出しながら、何でも笑いに変えようとする貪欲さを持っています。

 ブスかどうかを決めるのは他人ではなく自分自身です。「絶対に一歩も譲らない」という誠子さんの強い意思が、芸人としても女性としても彼女を格別に魅力的に見せているのだと思います。「ブスいじり」の新たな地平を開いた尼神インターは、今後さらなる飛躍が期待できそうです。

二人はどこまでいけるのか? 今後の活躍に期待です (C) PIXTA
二人はどこまでいけるのか? 今後の活躍に期待です (C) PIXTA

文/ラリー遠田 写真/吉本興業、PIXTA

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