2018年の3月に、エド・はるみさんが慶應義塾大学大学院の修士課程を修了しました。テレビなどの番組の企画では、オードリーの春日俊彰さんの東京大学受験、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんの青山学院大学受験も話題となりました。なぜ今、芸人の皆さんは大学を目指しているのでしょうか。お笑い評論家のラリー遠田さんが解説します。

大学を目指す芸人たち

勉強時間が限られているため、合格することはなかなか難しそうですが… (C)PIXTA
勉強時間が限られているため、合格することはなかなか難しそうですが… (C)PIXTA

 ひと昔前までのお笑い界では、大学を出ている芸人というのは希少な存在でした。大学を出て普通の会社に就職できるような人間がわざわざ入ってくるような業界ではない、と考えられていたのです。

 しかし、今では状況が一変しました。大卒の芸人が珍しくないのはもちろん、一流と呼ばれるような大学を出ている高学歴の芸人もたくさんいます。田畑藤本の藤本淳史さん、XXCLUBの大島育宙さん、石井てる美さんは東大卒芸人、ロザンの宇治原史規さんは京大卒芸人として知られています。いまや高学歴芸人の学力ランクは天井知らずに上がってきています。

 そんな中で最近、いったん世に出た芸人が新たに大学や大学院に入学したり、それを目指して受験勉強を始めたりする、という動きが目立っています。

 例えば、「グー!」というギャグで一世を風靡したエド・はるみさんは、今年3月に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の修士課程を修了したことを発表しました。また、萩本欽一さんは2015年に73歳で駒澤大学仏教学部に入学。現在も大学に通っています。

 また、テレビ番組などの企画として大学受験に挑戦する芸人もいます。最近では、オードリーの春日俊彰さんの東京大学受験、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんの青山学院大学受験が話題になりました。なぜ今、芸人たちはこぞって大学を目指しているのでしょうか。

芸人が大学や大学院を目指す目的は2パターンある

 芸人が大学を目指すのは2つのパターンに分けられます。一つは、本人が明確な目的意識を持って、キャリアアップのために大学進学をする、という場合です。エドさんはこのタイプに当てはまると思います。彼女は大学院に進学してからの2年間、仕事と並行して研究活動に打ち込んでいました。研究のテーマは「身体的アプローチによってネガティブな感情をポジティブな感情に反転させる、ネガポジ反転学(R)」とのこと。修士課程を終えた後も、研究者としての活動は続けていくそうです。

 エドさんは以前、小池百合子都知事が主宰する政治塾「希望の塾」の都議選対策講座を受講していたことがあり、政治家への転身も噂されていました。エドさんの経歴を振り返ると、「新しいことを学びたい」という気持ちと「そこで学んだことをこれから生かしていきたい」という気持ちの両方を強く感じます。

 「そのまんま東」こと東国原英夫さんもこのタイプだと思います。彼は2000年に早稲田大学第二文学部に入学しました。卒業後の2004年には再び早稲田大学政治経済学部に入学して、2006年に退学しました。大学で地方自治や選挙制度について学んだ東国原さんは、後に宮崎県知事選に出馬。見事に当選を果たして宮崎県知事となりました。その後も衆議院議員を務め、大学で学んだことを生かしてキャリアを積み重ねています。エドさんや東国原さんは、大学に入ることや大学で学ぶこと自体がゴールなのではなく、その先にある目標が明確に見えているのだと思います。