時代に支持されにくくなったとんねるず
とんねるずの二人は、もともとは何も持っていない素人でした。しかし、持ち前の笑いのセンス、反射神経や運動神経、スタイルのよさなどを兼ね備えていた彼らは、次第に女性ファンからアイドルとして支持されていくようになりました。とんねるずは芸人とアイドルという垣根を超えた特別な存在になったのです。
そんな彼らは、歌を歌ったり、ドラマに出演したり、コント番組に出たりして、どんどん成り上がっていきました。いわゆる芸人とはあまり積極的につるんだりせず、ミュージシャン、アイドル、俳優といった別のジャンルの芸能人たちと交流を深めていきました。素人感を売りにしていた彼らは、いつしか本物の芸能人になっていました。
彼らは、どんなに自分たちの地位が上がっても、頑なにその芸風を変えようとはしませんでした。今でも彼らは、番組側に用意された企画や台本に縛られず、強烈なアドリブを繰り出しています。「素人芸」こそが自分たちの本質であり、そこから離れてしまうと魅力が一気に失われてしまうことになる、というのがよく分かっているからです。
ただ、時代はいや応なしに変化しています。芸人の地位が上がり、テレビに出る芸人の数も増えている現在では、お笑い界では「チームプレー」が基本になっています。芸人たちがバラエティー番組で共演するときには、空気を読み合い、サインを出し合いながら、集団で仲良く笑いを生み出していくことが一般的です。あえて後輩芸人に冷たく接したり、ひどい目に遭わせたりして予定調和を崩すとんねるずのやり方は、今の時代には支持されにくくなっているのです。
私自身を含めて、今でもとんねるずを熱く支持している人が多いのは、彼らの芸の本質的な部分が独創的で面白いと感じているからです。彼らがこだわりを持って大切に育ててきたとんねるずというブランドの価値は、たとえ番組が終わっても揺らぐことはないでしょう。
文/ラリー遠田 写真/PIXTA
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