2012年に「キングオブコント」で優勝したバイきんぐ。実はこの時、彼らの芸歴は16年でした。「遅咲き芸人」の実力が認められるようになるまでの歩みを、お笑い評論家のラリー遠田さんが解説していきます。

元祖「遅咲き芸人」、芸歴16年からの快進撃  (C) PIXTA
元祖「遅咲き芸人」、芸歴16年からの快進撃 (C) PIXTA

 日本全体が空前の高齢化社会に突入している昨今、お笑い界でも同じことが起こっています。「若手芸人」というと、一昔前なら10代後半から20代前半ぐらいで芸歴10年以内ぐらいの人のことを意味していたのですが、現在では30~40代で芸歴10年超えの「若手芸人」も珍しくはありません。

 そもそも、2010年ごろまでは「芸歴10年以内」が若手芸人の一つの目安になっていて、「それまでに売れないと先はない」という定説がありました。そのイメージが定着したのは、2001年から2010年に行われていた「M-1グランプリ」の参加資格が「コンビ結成10年以内」だったからです(※2015年に復活した「M-1グランプリ」からは「結成15年以内」に参加資格が変更)。実際、この時代までは、新たにブレークする芸人の大半は、芸歴10年以内には何らかのチャンスをつかんでいました。

 その後、お笑い界でそのようなイメージが徐々に変わっていったのは、芸歴10年を超えてからブレークする人が続々と出てきたからです。その代表ともいえるのがバイきんぐの二人です。

 彼らは2012年にコント日本一を決める「キングオブコント」で優勝して一気に知名度を上げました。この時、既に芸歴16年でした。彼らは1996年に大阪で活動を始めて、それから東京に移り、事務所をいくつか転々として、苦労を重ねた末にようやく栄光を手にしたのです。

 優勝をきっかけにして、小峠英二さんのほうは順調に仕事を増やしていきました。コントの中で小峠さんが使っていた「なんて日だ!」というフレーズが独り歩きしてちょっとした流行になり、粘っこくて鋭い独自のツッコミが高く評価されていました。

 最初のうちは、バラエティー番組でドッキリに引っ掛けられたり、先輩芸人にイジられたりする仕事が多かった印象がありますが、小峠さんはそこでも巧みに受け身を取って、笑いを生み出していきました。

 業界内でもその才能は認められ、深夜番組「有田チルドレン」(現在は「有田ジェネレーション」)では進行役を任されました。次々に現れる破天荒な芸風の若手芸人たちを力強くさばいていく姿が印象的でした。そして、2017年4月に始まった「陸海空 こんな時間に地球征服するなんて」(現在は「陸海空 地球征服するなんて」)では、番組の顔ともいえるスタジオMCを担当しています。