こんにちは。Before 9(ビフォア・ナイン)プロジェクト主宰/CONECTA代表、池田千恵です。「ひとり力の作り方」で提唱する「ひとり力」とは、「自分の頭と心を定期的に棚卸し、客観的に見つめて軌道修正していく力」のこと。独身、既婚、家族と同居、ひとり暮らし、子育て中…。どんな状況にあっても精神的、物理的に「ひとり」の時間を作ることはできます。「ひとり力」をつけることで、ほっとしたり、リフレッシュしたり、リラックスしたり、将来のことを楽しく想像したり、今までの振り返りをしたりできるようになれば、慌ただしい毎日も、心穏やかに過ごせるようになります。本来のあなたを、あなた自身の手に取り戻すひとつの手段が「ひとり力」をつけることです。第30回の今回は、「やらない?」と聞かれたら「やります!」と大風呂敷を広げよう、をテーマにお伝えします。

「自信がありません」と遠慮する人ほど、実は「隠れ自信家」?

 最近ダイバーシティ、女性活用をテーマに企業や自治体から講演や研修の依頼をいただくことが増えています。そこで感じることは「自分見積もり力」が低い女性が多いな、ということです。

 自分見積もり力とは、自分の実力を正しく見積もる力のことです。これが高すぎると単なるイタイ人ですが、「主張するとイタイ人に思われるんじゃないか」とか、「自分はまだまだ力不足だ」という気持ちから一歩を踏み出せないのが、自分見積もり力が低すぎる人です。

 意外に思われるかもしれませんが、実はそういう人ほど、自信がないように見えて「隠れ自信家」であることが多いのです。「自分はまだまだ力不足だ」と思っている、ということは、「理想の自分」、つまり「本来あるべき自分」への基準値がものすごく高いということ。今の自分の力を「まだまだこんなもんじゃないぞ」と思っているわけですから、隠れ自信家です。

 もともと力があり、根性があって本当はできる「隠れ自信家」の女性ほど、次のような負のスパイラルに入ってしまい抜けられなくなってしまうことが多いように感じます。

理想の「あるべき自分」が、エベレスト並に高い
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今の自分とのギャップが許せず、抜擢されたときに「まだまだその役目は私には無理です」と言って、自ら表舞台にあがるチャンスを辞退してしまう
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理想の自分に到達するまで頑張ろう、と思っているうちに、失敗しながらもがむしゃらに挑戦し、成長していく人にどんどん追い越される
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私のほうができるのに、なんであの人ばかり! という、ドロドロの嫉妬に苦しみ、ひたすら頑張っても抜擢されないまま
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努力しても報われない、と燃え尽きる

 もっとも、このような心境になってしまうのも無理もないことかもしれません。この連載の第1回でもお伝えしましたが、今は情報が多すぎる時代。SNSにあふれる周囲の状況と自分を比べれば比べるほど、自分はたいしたことないんだ、と思ってしまう傾向にあります。

 でも、「まだまだ自分は」とずっと言い続けて、高い理想の姿にたどり着くまでに、人生終わっちゃったら…と思ったら、怖くないですか? 「ちょっと自分にはまだまだかな?」と思っても、えい! と踏み出して、ちょっとした失敗を繰り返しながら成長したほうが、⼈⽣楽しいな、と思いませんか?

 「やらない?」と聞かれたら「やります!」と大風呂敷を広げましょう。理想の自分はダメな自分を積み上げて作っていくものです。理想を高いところに掲げて登るのにひるむのではなく、失敗しながら積み上げていって、だんだん大きな山にしていけばいいのです。エベレストを目指して「まだまだ」なんて言っているほど、人生は長くないのですから。

Fake it till you make itの魔法を自分にかけよう

 「自分には無理かも」とひるみそうになったときにオススメの言葉が、「Fake it till you make it(できるようになりたかったら、できるふりをしろ)」です。

 「私には無理だ」とひるむことほど、オファーを受けたら余裕の表情で、(キリキリ胃を痛めながらも)「できます!」と宣言し、後から必死になって追いかけてみましょう。その勇気をもつための魔法の言葉が、Fake it till you make itです。舞台を用意された、ということは、あなたにはできる可能性があると周囲が感じていることだからです。それを見越しての抜擢なのです。

 Fake it till you make itで行動すると、自分は振り落とされてしまうのではないかと不安になることもあるでしょう。焦ることもあるでしょう。でも、焦りを恐れる必要はありません。なぜなら、焦りは自分が今以上の自分になれる余地があるということの裏返しだからです。「このままじゃやばい!」と思えるということは、あなたには、まだまだ伸びる余地があるということなのですから。

 今までの理解を超える極端なものを見聞きし、観ている景色を一段ひき上げ、その場にいるのにふさわしい「ふり」をしていくことは、体験の幅を広げる上でも貴重です。こうして自分に負荷をかけていくと、いつのまにか、与えられた役割を果たせる自分に成長していくのです。自分自身をFake していると、いつの間にか、見える景色が変わります。できないことができるようになっていき、Fake が Fakeでなくなっていくのが、少しずつ快感に感じるようになります。

 見たことがない景色は、一度見ると、見たことがある景色へと変わります。その楽しさ、うれしさ、すばらしさを、勇気を持って体験してみませんか?