女性が活躍しにくいイメージが強い建設業界。そのなかで、ひと際ダイバーシティ推進に注力しているのが、清水建設だ。09年にダイバーシティ推進の専任組織を立ち上げ、女性・外国人・障がい者など、多様な人材が活躍できる会社を実現すべく、さまざまな施策を実施。特にこの1年は、加速度的に活動が進み、女性管理職の数値目標の達成も見えている。今回は、同社社長の宮本洋一氏に、ダイバーシティ推進に注力する理由を聞いた。

女性比率を高めることに注力。この春入社予定の24%は女性に

――制度改正、研修、セミナー、外部団体への参加などこの1年の清水建設のダイバーシティ施策のフル展開ぶりは目を見張ります。ホームページのダイバーシティ関連の情報も「これでもか(笑)」というくらい掲出している。あえて伺います。女性が活躍しにくいと思われる建設業界で、スーパーゼネコンが積極的に女性活躍推進をする意味はどこにありますか。

宮本社長(以下、宮本):人口の半分は女性です。にもかかわらず女性たちが活躍し、一緒に働いていける場のない産業はおかしいでしょう。特に建設業は人材不足なので、もっと女性の活躍の場を広げれば担い手不足にも寄与すると思います。当社はもともと女性社員の数が少ないため、新入社員の女性比率を上げようと2割を目標数値に掲げています。実際、16年度の入社予定者は24%が女性です。

東京大学工学部建築学科卒業、1971年清水建設入社。2003年執行役員北陸支店長。2005年常務執行役員九州支店長。2006年専務執行役員九州支店長。2007年専務執行役員営業担当。同年代表取締役社長
東京大学工学部建築学科卒業、1971年清水建設入社。2003年執行役員北陸支店長。2005年常務執行役員九州支店長。2006年専務執行役員九州支店長。2007年専務執行役員営業担当。同年代表取締役社長

――入社予定者の4分の1が女性になりましたか。さっそく成果が出ているということでしょうか。一方、19年までに女性管理職を14年度比で3倍にするという目標を設定していますが、進捗はいかがでしょうか。

宮本:今のペースでいけば、17年度初には達成できそうです。

――2年前倒しで達成する見込みなんですね。どういう点が奏功したのでしょうか。

宮本:女性活躍推進の初期段階には、意識して女性を引き上げることが大事だと考えています。具体的には、まったく同じ能力の男女がいたら、女性に昇進のチャンスをより与えています。これは、社内のいたるところで公言しています。積極的にやると決めてやることです。それでも管理職になる女性比率はまだまだ少ないですが、そうすることで管理職比率は増えてきています。

――昨年、社外取締役として村上文さんが就任しました。女性が取締役会に加わることでどのような変化がありましたか。

宮本:取締役会に女性が1人加わるだけで、雰囲気が変わりますね。そして議論も活性化しています。村上さんは労働分野のスペシャリスト。当社のダイバーシティ推進や労働環境改善の取り組みに関してアドバイス・指導もいただいています。11人中1人ですが、今後はもっと増やしていきたいです。

――ということは、生え抜きの女性役員の誕生も近い?

宮本:来年、再来年は無理かもしれませんが、5~10年経てば、1~2人は出てくるでしょう。「それでは遅い。社長が決めればいい」というご意見もいただくのですが(笑)。ただ、実際のところ、時間はかかっても優秀な人材をしっかり育て、長期的な視点で女性役員を輩出していきたいです。