知床に“生”を与える「冬の使者」
北方から到来して、知床の海を白一色に染める流氷。知床は、「冬の使者」とも呼ばれるこの流氷が、北緯44度という北半球でもっとも南の海域に到達する場所である。
千島列島やカムチャッカ半島、ユーラシア半島、サハリン、北海道に囲まれたオホーツク海は、閉鎖的で海水の出入り口が少ない。千島列島の隙間からわずかに出入りできる程度である。
いってみれば、オホーツク海は超巨大なプールのようなもの。そこに、シベリアを流れる大河、アムール川から流れ出た淡水が大量に流入するのだ。これにより、オホーツク海表層の塩分濃度が薄められる。
こうして、オホーツク海は塩分が薄い表層と、塩分が濃いままの深層の二重構造となり、シベリアからの冷たい季節風が表層の海水の真水成分を凍らせ、流氷がつくられる。
ましてや海水の出入り口のないオホーツク海は、水温の高い日本海や太平洋の影響を受けにくい。そのためいったん水温が下がると、凍結に拍車がかかり、きわめて短期間で流氷が誕生するのである。