繊細な人は、環境変化への対応が得意

 常に周囲の状況を観察しているHSPは、実は環境変化に対応することに長けています。これは目まぐるしく変化する社会では必要不可欠なスキルでもあります。アーロン博士は、仕事の場面でのHSPについて次のように述べています。

[引用]HSPは一般的に注意深く、誠実、仕事の質にこだわり、細かいことが得意で、直感的な洞察力を持ち、才能があり、クライアントのニーズをよく考え、仕事場の雰囲気を和ませる。端的に言うと彼らは理想の従業員なのだ。どんな組織もこのタイプの人が必要である。
(Elaine Aron『The Highly Sensitive Person』)

 また、HSPの従業員は本来、健全な仕事環境の中では優れた才能を発揮するのです。

[引用][HSPに見られる]強い感受性、高度な認知能力は、劣悪な環境では傷つきやすいということではなく、より正確には環境に対する感度、適応性を意味する(Biological Sensitivity to Context, Ellis et al 2008;, Vulnerability of Plasticity Genes?, Belsky & Pluess 2009)。つまり、不健全な仕事環境の影響をいち早く受けるのは繊細な従業員だが、逆に健全な環境では彼らがもっとも力を発揮する。健全な仕事環境を整備する努力を怠らず、従業員にとってポジティブな制度などを導入する組織は、とても敏感な従業員からもっとも大きなリターンが返ってくる。
(HRZone「Highly Sensitive People in the workplace - from shame to fame」)

 またHSPは仕事場のバロメーターとして、問題をいち早く感知します。つまり、彼らに合わせた仕事環境の整備は、他の従業員にとっても働きやすい場所なはずです。

[引用]すべての従業員が遅かれ早かれ影響を受けるが、特に感受性が強く、情報の処理能力に長けている人の方が先にものごとの影響を受けやすい。これがなぜ重要かと言うと、繊細な人の状態が、仕事環境の良いバロメーターになること意味するからだ。つまり、他の従業員が悪い影響を受ける前に、彼らはリーダーに仕事場を改善するための貴重な情報を提供しているのである。
(HRZone「Highly Sensitive People in the workplace - from shame to fame」)

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 いかがでしたか? これだけでもあなたの「繊細さ」の見方がずいぶん変わったのではないでしょうか?

 残念ながら、こうした繊細な人の魅力は、仕事場ではほとんど理解されていません。繊細さは欠点である、とする社会通念をそのまま鵜呑みにするのではなく、自身についての理解を深めていくことが、状況を変えていくための第一歩だと思います。

 「己を知る」ということが、繊細な人にとっては非常に大事なことなのです。自分の特性に合った環境を探す、もしくは自ら自分に合った環境、仕事を作り出していく力が必要です。

 繊細な人も、そうでない人も、今回の記事で「繊細さ」というものがより客観的に見られたのではないでしょうか。あなたの仕事での前進を後押しするきっかけ、もしくは繊細な人とうまく付き合っていくヒントになればと思います。

文/相磯 展子 写真/PIXTA

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