アメリカで注目が集まっている“ハピネス研究”を知っていますか? この分野では、「働く人の精神がどのように仕事に影響するか」についての研究が盛んに行われ、それが実践の場でも取り入れられています。これは仕事で感情を出すことをタブーとしがちな日本とはずいぶん違う考え方です。本連載では、翻訳・通訳者の相磯展子が、「ハピネス研究」をはじめとする海外の仕事観を紹介しながら、日本の仕事の常識に疑問をぶつけていきます。違った視点に触れることで、悩みを解決するヒントがきっと見つかるはずです。

 いわゆる繊細な人は仕事場では不利な立場に立たされます。あなたもその一人ではないでしょうか? そして、自分の繊細さを弱みだと考え、なんとか改善しようとしていませんか?

 今回の記事はそんなあなた、もしくは繊細な人についてもっと知りたいと考えているあなたのためのものです。単なる「欠点」だと考えられがちなこの特性が、研究の領域でどう捉えられているかをご紹介します。新たな視点を得ることで、自分の繊細さを乗り越えるのではなく、それを活かすきっかけになればと思います。前回の記事「繊細なのはダメなこと? 強くなる努力は必要なのか」では、繊細な人のための「自分を守るための3つのステップ」をご紹介しましたが、ぜひそれと合わせて読んでみてください。

「繊細さ」は生き残りの戦略

 Elaine Aron(エレイン・アーロン)博士は、90年代の頭に世間一般では「繊細」と称される特性についての研究をはじめました。彼女は1996年にこの特性を「ハイリー・センシティブ・パーソン(Highly Sensitive Person、以下HSP)」と名付け、現在に至るまでその研究を続けてきました。Aron博士によると、実に人口の20%がHSPに当てはまります。また、それは生まれつきの特性で、人間に限らずコバエ、鳥、魚、イヌ、ネコ、馬、霊長類まで、実に100種類以上の動物にも観察できることから、生き残りの戦略の一つと考えられています。

 では、HSPとはどういった特性のことなのでしょうか? シンプルに言うと、普通の人より周囲の状況に敏感な人のことです。光、臭い、音などに敏感だったり、仕事が多いと動揺しやすかったり、一人の時間が必要なタイプの人はこれに当てはまります。また子供の頃に、親や先生に「繊細」「人見知り」と言われた記憶がある人もHSPの可能性高いと言われています。Aron博士は、HSPの特性を「DOES」に対応する4つのポイントにまとめています。

・情報を処理の仕方が普通の人より複雑(Depth of processing)
・刺激過多になりやすい(Overstimulation)
・感情的に反応しやすく、共感しやすい(Empathy and emotional responsiveness)
・普通の人が気づかないような些細なことに気づく(sensitivity to subtleties)