誘惑を我慢することも疲労の原因

 そもそもパソコンは誘惑だらけです。実は1クリック先に気になるサイトやSNSの通知があると思うだけで、生産性は低下します。なぜならこうした誘惑に抗うだけでもエネルギーを消耗するからです。

 ダラダラ仕事をして疲れ切った脳は当然、誘惑を避けきれなくなっていきます。そして「ちょっと息抜き」にFacebookやInstagramをチェックすることを思いつくのです。これはつまり疲労のサインです。

 しかし、「休みたいけど、まだ仕事が終わっていない」と思うと、休憩モードに入ることもできない。こうして私たちは次々と仕事に関係ないことに吸い込まれていきます。本人は休憩のつもりでもいっこうに疲労は回復せず、仕事に集中することさえできないのです。

[引用]鉄のような意志力を持っていたとしても、コンピューター上にインターネットが待ち受けているという事実があるだけで、仕事のパフォーマンスは低下する。誘惑に抵抗すること自体が、集中力をむしばみ、脳を消耗させてしまうのだ。2011年の研究で、この事実が心理学者たちによって裏づけされた。コペンハーゲン大学の研究の参加者たちは、コンピューターであるタスクを行うよう指示された、その後、一部の人たちは笑えるビデオを見ることが許された一方で、もう一部の人たちはビデオの再生ボタンを目の前にして、それを押すことを我慢しなくてはならなかった(それはパソコン画面上にある魅惑的なYouTubeビデオと向き合うことに似ている)。その後、被験者たちに新たなタスクが与えると、ビデオを見ることを我慢しなくてはならなかった被験者の方が、ビデオを見た被験者に比べてパフォーマンスが低下していることが分かった。
(Jocelyn K. Glei編『Manage Your Day-to-Day: Build Your Routine, Find Your Focus, and Sharpen Your Creative Mind』、Amazon Publishing)

 これからも短期集中がいか重要か分かります。パソコンで仕事をしているならなおさらです。疲労状態で仕事をダラダラ続けることは特に危険です。なぜなら仕事がいっこうに進まない一方で疲労だけが溜まっていくからです。

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 端的に言えば、パソコン仕事は長距離走ではなく、短距離走に向いているのです。休む時はしっかり休み、走るときは全速力ということです。

 また、努力していることと疲労していることを同等にとらないようにすることも大事です。疲れているからといって、生産性が上がっているわけでは決してありません。自分を犠牲にして長時間働くことは、スマートではないのです。

 むしろ、短いスパンで仕事に打ち込める状態をつくるためにしっかり休養することが重要。その時は物足りなく感じるかもしれませんが、長期的に見ればそれが最も賢く、健全な働き方なのです。

 便利さと引き換えにパソコンの使用にはいろいろと落とし穴があります。それを意識しておかなければ、あなたの生産性はみるみる低下していってしまいます。

 これを機に、PCと上手に付き合ってみるのはどうでしょうか?

文/相磯 展子、写真/PIXTA

*1 Even for the active, a long sit shortens life and erodes health
*2 DeskTime
*3 The Rule of 52 and 17: It's Random, But it Ups Your Productivity

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