西森路代さんのコラム「人気研究所」の今回のテーマは、ミュージシャン、俳優、文筆家と、どの分野でも活躍してきた星野源さん。今年は、『逃げるは恥だが役に立つ』に出演したことで、今までよりも幅広い層のファンを獲得しているようです。

ラブコメのセオリーがすべて詰め込まれた「逃げ恥」

 これまで、ベタベタのラブコメディをいろいろ見てきましたが、ラブコメには、二人の関係性が、進展しそうで進展しないということが鉄則としてあります。

 そのために、ラブコメでは、出会いが最悪で、お互いの印象が悪かったり、好きになり始めても、その気持ちに気づかなかったり、気持ちがバレバレなのに、一方が気づかなかったり、はたまた気づいたのに、それが誤解であると思い込んだりしないといけません。

 また、最初は好きではない二人が、自分の意志にかかわらず頻繁に会っている設定にするために、あるいは、オクテなヒロインでも相手と会う機会が多くなる設定にするために、いきなりひょんなきっかけで、同居することにあるというものもラブコメの鉄板です。例えば、『イタズラなKiss』という作品では、ヒロインの琴子の家が倒壊し、親同士が親友であったことから、ヒロインは大好きな入江くんと同居することになるのです。

 「逃げ恥」では、お互いの印象はさほど悪くはないものの、出会いは家事代行サービスの雇用主と労働者であるし、ひとつ屋根の下に暮らしたのも偽装結婚がきっかけだから、好ましい感情が生まれても「これは恋ではなく業務の一環だ」と考えて、好きという気持ちにブレーキをかけてしまう。実は「逃げ恥」には、こういったラブコメのセオリーがすべて入っているのです。