さまざまな呪縛からすっと解放されるとき

発売された最終巻。1巻と比べると、「呪い」「好意と感謝」というワードが加わっている
発売された最終巻。1巻と比べると、「呪い」「好意と感謝」というワードが加わっている

――「呪い」という言葉は、漫画とドラマ両方に出てきました。この言葉って、昔だったらホラーで使われるような意味合いが大きかったように思いますが、今は、人を縛っていた要因という意味で、一般的に使われる言葉になりましたね。

海野 もうそういう日本語になりましたよね。そこまで意識して入れたわけではなかったんですけど、ドラマの中で、一番いいシーンに持ってきたことで際立っていましたよね。野木さんはやっぱりうまいなと。

野木 ありがとうございます。でも、原作の百合ちゃんのシーンがあってのことなので。それを読んで、若さに対する呪いだけでなく、すべてにおいて呪いはあるよねって思えたんですよね。

――百合ちゃんのシーンで言えば、「例えば私みたいなアラフィフ独身女だって社会には必要で、誰かに勇気を与えることができる」というせりふがあった後で、風見さんに「そんなこと言わないで」と言われ、考え込んでしまうというシーンも印象に残りました。

海野 私も描きながら分からなかったんですよ。ふと自分のことを考えていたときに、私って40過ぎて子どもを生まなかったけど、なんだかんだで頑張ってきたし、周りの人からも海野さん楽しそうに生きてるって言われて、やってきた価値もあるなって。そう、ぼんやり考えていたら、頭のどこかで、「そんなこと言わないで」っていう声が聞こえてきて、「その声は誰?」ってなって。自分では自虐で言っているわけでもないのに、考えていたら泣けてきちゃって。それをそのまま描いたんです。そしたら、女性だけでなく男性からも泣けましたと結構言われたので、「みんなこの気持ち分かるんだ!」と。

――以前、大谷亮平さんに取材したことがあるんですが、大谷さんも百合ちゃんのこのシーンを読んで泣けたとおっしゃっていました。

海野 結局、漫画に描くためには答えを出さないといけないので、自分で考えて、「こういうことなのかな」って思ったせりふを風見さんに言わせたんですけど、最初は何なのか分かってなかったですね。基本、次号に続くって描きながらも、先のことは先の私が考えるという感じでやってきたので。