「小ざかしい」と攻撃されて悩む女性が救われる

――野木さんは、セリフを前後させるなど、原作から構成を絶妙に変えることもしていますよね。そこにも引き込まれました。

野木 ドラマの脚本なので、45分間をどう見せて、次にどうつなぐかという視点で原作から構成を変えています。原作にしっかりとした骨格がちゃんとあるので、順番を変えても踏み外さないで済みました。

海野 私はドラマを見ていて、「うまいわー、職人やわー」っていつも思ってました(笑)。

野木 今回は、原作と並行して脚本作りが進んでいたこともあって、「あっ、まずい」と思ったこともあって。4話で平匡が自分の殻に閉じ籠もってしまったことで、みくりが風見のところに行ってしまって、ちょっと気持ちが揺れるシーンありますよね。風見がみくりに向かって言う「小ざかしくても好きですよ」というせりふを書いたんですけど、ちょうどその頃、海野先生の連載の中で、平匡がみくりに「僕は小ざかしいとは思ってません」というシーンが出てきて。すごくいいシーンだからこの先ドラマでも使いたいなと思って、でも風見に同じようなことを先に言わせてしまって、どうしようかと(笑)。結局は、みくりの受けで「小ざかしいは、否定しない(んですね)」と言わせて、「風見は小ざかしいと思っている」と強調しておくことで、風見と平匡、二人の認識の違いが見えるように変更しました。決定稿の後に出てきていたら、危なかった。

海野 「小ざかしい」というせりふは、原作ではクライマックスのシーンに出てくるものではなかったけど、ドラマではクライマックスになってすごくよかったです。

――「自分が小ざかしいと思われている」と悩んでいる世の中の人は全員、あのシーンは泣けましたよね。

野木 そもそも海野先生は、どういういきさつから、小ざかしいって言葉を使うことになったんですか?

海野 みくりちゃんが頭の良い女の子なので、頭の良い子が攻撃されるときに使われて凹む言葉ななんだろうと考えました。

野木 言われたことがあるとか、見た経験があるとかなんですか?

海野 特にはないんです。でも、男性でも、頭が良いと小ざかしいと言われることもあるし、皆さんに「分かるー」って言ってもらって。頭が良い人ってそう言われやすいんだなと思いました。

――頭が良いだけでなく、仕事を結構バリバリやってたり立場が上になったりするほど、普通に振る舞っていても、怖いって言われたり。

野木 気が強いって言われたりね。まあ実際強いんだけど(笑)。