ダークな作品でも才能を発揮

 ラブストーリーに出るのも俳優の経験になりますが、20代に入ってそうした作品を卒業するときに、多くの俳優は、そこからどこに向かっていいのか、迷うことが多いものです。林さんは、そういう時期にはただオファーのあった作品にがむしゃらに出続け、暴力や抗争を描いた高橋ヒロシ原作、三池崇史監督の「QP」や、映画「闇金ウシジマくん」、「莫逆家族 バクギャクファミーリア」、「悪の教典」など、ダークな作品にも次々と出演していきました。

 ここまで見ると、昨今、注目された「HiGH&LOW THE MOVIE」での、赤い法被姿で、車のボンネットに乗って登場するあの派手で独特のオーラを出しているのも納得できるというもの。あの雰囲気は、一朝一夕で出来上がったものではなかったのだと納得します。

 2016年は林さんにとっても転機の年だったのではないでしょうか。Netflixで放送され、海外でも評価を得た「火花」は、地上波のテレビドラマとは違った重みが感じられる作品。説明が少なくて、余韻の残る絵作りが特徴です。

 第1話で、林さん演じる漫才師の徳永と、徳永が憧れる破天荒な先輩芸人・神谷が、居酒屋でボケにボケを重ねながら、この人と自分は何か運命めいた波長があると感じ合うシーンがあるのですが、そのときの表情を見ただけでも、ぐっときてしまいました。表情一つでここまで感情を揺さぶられるという経験は、なかなかあることではありません。