あなたの発言、大丈夫?

 セクハラというと、年上の男性上司が部下である女性社員に性的な言動をする、というイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、そうとばかりは限りません。女性から男性へ、同性同士もあり得ますし、2017年1月からはセクハラ指針が改正され、LGBTなど性的少数者に対しても対象となることが明確化されました。

 コミュニケーションのつもりで語りかけた言葉が、知らず知らずのうちに、セクハラとも捉えられかねない発言となっているかもしれません。

 例えば、職場や飲み会の席で、次のような発言をしていませんか?

 「いつもよりお化粧濃くない? 今晩は彼氏とデート?」
 「なんで彼氏いないの? いい人紹介してあげようか?」
 「なんで結婚しないの? もういい年なんだからえり好みしてちゃダメよ」
 「お子さんはまだ? 早いほうがいいわよ」
 「最近、ちょっと太ったんじゃない?」(おなかなど体の一部を触りながらのボディータッチ)
 「○○さん、取引先の部長と不倫してるって評判よ」
 「○○さん、あんなにカッコいいのに結婚してないなんて、なんか訳ありじゃない?」
 「○○ちゃんが好みだから、カラオケでデュエットしたいって! 歌ってあげなよ」

「ねえねえ、知ってる?」 (C) PIXTA
「ねえねえ、知ってる?」 (C) PIXTA

 こうした発言を、どこかで聞いたことがある、という人は多いのではないでしょうか。これらは一例ですが、相手に性的な事実関係を尋ねることや、性的な内容の情報(噂話)を流布すること、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘いなどはセクハラに該当する場合があります。また、必要なく体へ接触することや、わいせつ図画を配布・掲示することなどの行動も気を付けなければなりません。

 私たちは、他人との物理的な距離を一定以上保とうとする本能があり、一人ひとりが自ら有している、自分の周りに形成されている目に見えない空間領域を「パーソナル・スペース」といいます。恋人や家族など親密な関係の場合は0~45センチとされていますが、ビジネスシーンでは1~3.5メートルと言われており、1メートル以上の距離を意識しておくとよいでしょう。

 また、宴会の場で気を付けたいのは、アルコールが摂取できない人に対して、飲酒を強要することです。これは命をも脅かす危険な行為で、パワーハラスメントに該当し得ることもあります。

 相手にとっては思いやりのつもりの言動が、本人にとっては「ただのお節介で大変不快」「出社するのが苦痛で、仕事にやる気が出ない」ということもあります。度を超えて執拗に繰り返せば、セクハラになり得るという事実を認識し、思いやりとお節介のボーダーラインをわきまえて、職場でのコミュニケーションを図りましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA