働き方は今後さらに多様化する

 今後、画一的な働き方から、ライフステージに応じた柔軟な働き方が可能な時代へと進化していくでしょう。ICT(情報通信技術)の発達が、場所や時間にとらわれない働き方を実現させてくれました。雇用型の在宅勤務が徐々に広まりつつある一方、フリーランスとして企業から独立して働く動きも今まで以上に広がっていくでしょう。クラウドソーシングで、いつでも簡単に仕事を受注できるプラットフォームもさまざまな分野で広がっています。

 AIの発達により、労働力人口が減っても定型業務はAIでカバーされるという見方はあります。しかし、企業にとって重要な経営資源であるコア人材については、より働きやすい雇用環境を提供することで、採用・定着を図りたいと考えるため、さらに自由度が高まっていく方向性に進むと考えられます。

 労働時間や勤務場所、職務内容等を限定した多様な正社員といった雇用区分も増えてくるでしょうし、副業へのハードルも低くなっていくでしょう。

キャリアを開発するのは「自分」

 企業も副業を容認する動きが出てきています。一つは、変化の激しい時代において、従業員を教育する時間やコストをかけていられない、という本音もあります。そればかりではなく、社外での知見を広め、水平展開していくことで、本人のスキルや意識も高まり、社内に持ち帰って新たなイノベーションを生み出すチャンスにもなり得ます。

 ただ、副業を行う場合は、社内のルールをきちんと確認して適切な対応を取ることが不可欠です。副業が許可制となっている職場において、それを無視して勝手に副業をすれば、懲戒処分を受けることにもなりかねません。何のために副業を行うのか、自分の中で目的を整理し、本業も手を抜かずさまざまな経験に挑戦してみることで、次のキャリアにもつながっていくかもしれません。

副業はキャリアの選択肢を増やすきかっけになるかも (C) PIXTA
副業はキャリアの選択肢を増やすきかっけになるかも (C) PIXTA

 これまでは、強い人事権等を行使して、会社主導で従業員のキャリアを形成してきましたが、企業も自由自在に従業員の配置が行えなくなってきています。例えば、配置の変更で就業の場所の変更を伴う場合は、育児や家族の介護が困難となるようなときに、その状況に配慮しなければなりません(育児・介護休業法第26条)。労働者のキャリアへの期待に対する配慮が、配置の争点となった裁判もあります。このように、一方的な配置転換が難しくなってきた背景も見逃せません。

 今後は、(2)自分のキャリアは自分で開発していく、「個人主導型のキャリア」へと転換していきます。

 もとより、女性は出産・育児等や転職により職場を離脱した時点で、自らのライフキャリアを考えざるを得なかった側面はあります。これからは、白か黒かというどちらかの選択ではなく、働きながら副業をしたり、パラレルキャリアを広げていくなど、多様な選択肢が考えられます。

 長寿化が進み、変化の激しい時代において、一生ずっと一つの仕事だけに従事する、というほうが、むしろ珍しくなっていくでしょう。企業の事業ポートフォリオが複線化しているように、個人のキャリアもしなやかに複線化していくのが、ごく自然になっていくのではないでしょうか。