こんにちは、「ワークルールとお金の話」の 佐佐木由美子です。先日、育児休業中の女性から、「会社からちょっと仕事を頼まれて、育休中ですが働くことになりました」という話を伺いました。こうしたケースで注意しないと、思わぬリスクを背負うことにもなりかねない……ということをご存じでしょうか。

「育休中ですが働くことになりました」 (C)PIXTA
「育休中ですが働くことになりました」 (C)PIXTA

そもそも育休中に働いていいの?

 育児・介護休業法では、労働者が申し出ることにより、子が1歳(一定の延長要件に該当する場合は、最長2歳)に達するまでの間、育児休業をすることができる、とされています。育児休業の申し出は、「一定期間労働者の労務提供義務を消滅させる効果のある意思表示」なので、会社が「育休中でも働いて」と業務を命じることはできません。

 それでも、育児休業中に働いている人がいるのは、なぜなのでしょう?

 労働者と会社側の話し合いによって、育児休業期間中の労働者が子の養育をする必要がない期間については、一時的・臨時的にその事業主の下で働くことが認められているからです。

 育休中に働いてもいい、という認識が広まったのは、2014年10月に改正された育児休業給付金の取り扱いが変わったことが関連しているともいえるでしょう。

 雇用保険に加入している人は、一定の要件に該当すれば、休業している間育児休業給付金がもらえます。従来は育児休業を開始した日から起算した1カ月ごとの期間(以下「支給単位期間」といいます)のうち、11日以上働いていた場合は給付金が支給されることはありませんでした。

 ところが、2014年10月1日以降は、支給単位期間中に10日を超えて働いた場合でも、80時間以下のときは支給されるようになりました。このため、月80時間までなら働いてもOKといった、ある意味「誤った認識」がまことしやかにささやかれるようになりました。