こんにちは、「ワークルールとお金の話」の佐佐木由美子です。日本人の2人に1人は一生のうちにがんと診断されると推計されており、今や私たちにとって非常に身近な問題といえます。今回は、がん治療と仕事の両立について考えてみたいと思います。

がんの罹患率は高齢になるほど増加

 日本では、年間約85万人が「がん」と診断されていますが、国立がん研究センターがん情報サービスの統計によると、がん罹患(りかん)率は年齢が上がるにつれて増加し、男女とも50代くらいから高まることが分かります(図表1)。ここで注目したいのが、30代後半から40代というまさに働き盛りの世代において、女性のがん罹患率が高いということです。

 女性特有のがんとして、乳がん、子宮がん、卵巣がんがあります。特に乳がんは罹患率が高く、30代から増加する傾向にあります。子宮がんは大きく二つに分けられ、子宮頸がんは20代後半から30代後半に、子宮体がんは40代後半から増加する特徴があります。毎年の定期健康診断に加えて、乳がんや子宮がん検診を併せて行い、早期発見することが有効な対策といわれています。

図表1:がん罹患率
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

仕事と治療の両立に向けて

 がんというと、かつては「不治の病」とされていました。しかし、近年は診断技術や診療方法の進歩により、生存率も向上し、長く付き合う病気へと変化しつつあります。仮にがんと診断された場合であっても、すぐに会社を辞めなければならない、という状況は当てはまらなくなってきています。

 がんの診断直後は大きなストレスを受けますし、不安や否定的な気持ちになって、場合によってはうつ病や適応障害になるケースもあるといわれています。治療に関する不安はもちろんのこと、家族のこと、お金のこと、仕事のこと……さまざまなことが頭をよぎるに違いありません。ただ、精神的な不安から、早まって退職という選択をしないように、日ごろから心づもりができれば、最善の方向へ転換することもできるのではないかと思います。

 近年の主ながんによる平均入院日数は短くなりつつあります。2002年の入院日数は35.7日でしたが、2014年になると19.9日へと短縮しています。一方で、外来患者数は増えており、通院しながら治療を受ける患者が増えてきています。治療の副作用や症状等をコントロールしつつ、治療を受けながら仕事を続けている人も増えています(厚生労働省 平成26年「患者調査の概況」悪性新生物の退院患者における平均在院日数より)。

 「働き方改革実行計画」においても、病気の治療と仕事の両立を一つのテーマとして掲げています。厚生労働省は、職場でがんや脳卒中などの疾病を抱える人たちに対して、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするため、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を策定し、普及に努めています。

 企業としても、人材育成の充実による生産性の向上に取り組む中、がんの治療が原因で働けなくなることは、大きな損失です。企業規模を問わず、治療と仕事の両立に向けた職場での取り組みが今後ますます求められていくでしょう。

 例えば、通院がしやすいように時間単位の年次有給休暇制度を設けたり、治療に専念してもらうための病気休暇を拡充したりすることなども考えられます。また、休職後にいきなりフルタイムとなると体力面での不安があるため、試し勤務制度や短時間勤務制度、在宅勤務制度、時差出勤などのように、勤務体系に配慮して働きやすい環境の構築に向けた取り組みが進んでいくことが予想されます。