社会保険制度も活用して

 がんに限らず、病気で働けないときは健康保険から傷病手当金を受給することが可能です。傷病手当金とは下記の事由に該当したときに、目安として支給開始以前の1年間における平均給与の3分の2相当額が最長で1年6カ月までもらえるという制度です。

1.業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

2.仕事に就くことができないこと

3.連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

4.休業した期間について給与の支払いがないこと(支払いがあっても傷病手当金の額よりも少ないときは差額が支給される)

 会社勤めで健康保険に加入されている方であれば利用したい、優れた制度といえます。東京都福祉保健局の調査によると、「傷病手当金を利用した」という人の割合が約3割しかいません。「知らなかったので利用しなかった」という割合が約4割となっており、ぜひこうした制度を活用してもらえたらと思います。

図表2:傷病手当金制度の利用状況
図表2:傷病手当金制度の利用状況
出典:「がん患者の就労等に関する実態調査報告書」平成26年5月 東京都福祉保健局

 また、医療費が高額になったときに利用できる「高額療養費制度」の利用状況については約8割が「利用した」と回答しており、これは医療機関によるアドバイスなどもあって認知度が高まっているものと思います。事前に入院が分かっている場合や通院による治療を続けている場合は、後から高額療養費制度で申請するよりも、「限度額適用認定証」を発行してもらうことで、医療費を自己負担限度額で抑えることも可能です。

図表3:高額療養費制度の利用状況
図表3:高額療養費制度の利用状況
出典:「がん患者の就労等に関する実態調査報告書」平成26年5月 東京都福祉保健局

自分一人で頑張らないで

一人で頑張らずに職場にサポートを申し出ることが大切 (C)PIXTA
一人で頑張らずに職場にサポートを申し出ることが大切 (C)PIXTA

 女性特有のがんについては、男性上司には相談しにくいという声があります。また、育児や親の介護の時期と自分自身の治療が重なることで、大きな負担を感じてしまい、退職を余儀なくされるという場合もあるようです。

 がんの治療法や副作用を理解し、仕事と治療の両立に向けた職場の配慮があれば、一時期は仕事を休むことがあっても、復帰して就労することは可能といえます。自分一人で頑張ろうとせず、職場にサポートを申し出ることも大切です。

文/佐佐木由美子 データ出典/国立がん研究センター、東京都福祉保健局 イメージ写真/PIXTA