こんにちは。「ワークルールとお金の話」の社会保険労務士 佐佐木由美子です。2016年4月から、病気や出産で働けないときにもらえるお金の計算方法が変わりました。特に注意したいのは、転職後のケースですが、どのように変わったのでしょうか?

どう変わったか、ポイントチェック

 私たちが業務外の病気やケガで仕事を休み、給与を受けられないときは、申請によって「傷病手当金」を受けることができます。これは、会社等に勤務して健康保険に入っている被保険者とその家族の生活を保障するため設けられている制度で、一般に会社を経由して健康保険組合へ申請をします。

(C)PIXTA
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 また、傷病手当金と同じように、健康保険に入っている被保険者が、出産前後における一定期間において出産のために仕事を休み、給与が受けられないときは、申請により「出産手当金」を受けることができます。

 いずれも働く人たちをいざというときに守ってくれる制度で、年間を通して数多く申請されている手続きです。2016年4月1日より、「傷病手当金」と「出産手当金」の計算方法が改正されました。

 これまでは、休んだ日の標準報酬日額に3分の2を乗じて、1日あたりの支給額が決められていました。たとえば、休んだ日の標準報酬月額(わかりやすくいうと平均給与)が30万円の場合、6667円が1日あたりの支給額となります。

 2016年4月1日からは、支給開始日以前の継続した12カ月の標準報酬月額を平均した額をもとに、算出されるようになりました。

1日あたりの額
=【支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額】÷30日×2/3

 たとえば、休んだ日の標準報酬月額が30万円であっても、一番はじめに支給された日を含む月から過去12カ月間の標準報酬月額を平均した額が低ければ、支給額も下がってしまうことになります。

 具体的なケースで考えてみましょう。2016年6月15日から、出産のために産前休業に入ることになってお休みするとします。この場合、6月以前の12カ月(2015年7月~2016年6月)の各月の標準報酬月額をまず確認します。2015年7月~8月までの2カ月間は、標準報酬月額が26万円、9月以降は昇給によって30万円だったとします。これを計算式にすると、以下のようになります。

(26万円×2カ月+30万円×10カ月)÷12カ月÷30日×2/3=6520円

 この場合、1日あたりの支給額は6520円となり、改正前とくらべると約150円低くなってしまう計算になります。出産手当金の場合、予定通りに生まれていれば産前産後で98日分ありますから、トータルで約1万4400円これまでより下がってしまいます。ちょっと残念ですね。こうした改正が行われた背景には、不正受給の問題があったと言われています。