職場のハラスメントに注意

 こうして見ると、実は短時間勤務ばかりでなく、フルタイムで復帰するものの残業を免除してもらう働き方などもあり、これらは本人が申し出れば権利として認められています。しかし、こうした制度があってもうまく職場に周知されていない場合もあり、「特別扱いされている」と誤解を受けてしまうケースもあるようです。

 制度を活用する本人においても、「権利だから当たり前」「私は子育てで大変」といった態度で仕事をしていると、なかなか職場で受け入れてもらえなくなってしまう可能性もあります。特に残業の多い忙しい職場では、「結局、仕事のしわ寄せを独身者が受けてしまう」と別の立場で悩んでいる方もいます。

 そうした軋轢(あつれき)がひどくなり、労働者個人の問題として放置されたままの状態でいると、「パワーハラスメント」や「妊娠・出産・育児休業等にまつわるハラスメント」が起きてしまう可能性もあり得るので、注意が必要です。

 育児・介護休業法では、育児休業の他、子の看護休暇や所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等措置について申し出をしたり、制度を利用したりすることを理由とする解雇その他不利益な取り扱いについて禁止しています。

 2017年1月からは、上司・同僚が、妊娠・出産や育児休業等に関する言動により、女性労働者や育休申出・取得者などの就業環境を害することがないよう、事業主へ防止措置を講じることが義務付けられました。

 例えば、フルタイムで復帰するものの、残業ができないので時間外労働の免除について上司に相談したところ、「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われるようなケースは、ハラスメントの典型例と言えます。また、制度利用の請求をした(またはしようとした)ところ、同僚が本人に対して「私だったら、迷惑を掛けるからそんな制度は使えない」などと言い、繰り返しまたは継続的に請求を取り下げるように働きかけることなどもハラスメントに該当し得ます。気付かぬうちに、上司や同僚がハラスメント行為者になり得る場合もあるのです。

 なお、事業主が労働者の事情やキャリアを考慮して、育児休業等からの早期の職場復帰を促すこと自体は制度等の利用が疎外されるものには当たりません。ただし、職場復帰のタイミングは労働者の選択に委ねられることに留意が必要です。

いつ職場復帰しよう… 保育園は入れるかしら… (C)PIXTA
いつ職場復帰しよう… 保育園は入れるかしら… (C)PIXTA

 新年度は育休復帰者が多い時期と言えますが、復帰する方も、受け入れる職場側においても、お互いの立場を理解し合えるように心掛けたいものです。パワハラが起きている職場では「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」が圧倒的に多いといわれています。

 ぜひ円滑なコミュニケーションを心掛けて、働きやすい職場を目指していきましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA