こんにちは。「ワークルールとお金の話」の佐佐木由美子です。先日、Web制作会社で働く衣子さんから、「残業をしてもしなくても、給与が同じなのはおかしいのでは?」と、ご相談がありました。なぜ、こうした問題が起こっているのでしょうか?

定額残業代の盲点

 衣子さんの話では、毎月30時間分の残業代として、5万円の手当が支給されているとのこと。必ずしも30時間働かなくても、給与がカットされることはありませんが、忙しい職場のため、毎月ほぼ30時間近くの残業をしているそうです。場合によっては、月40時間になることもありますが、30時間を超えた残業分については、追加できちんと支払ってもらえている、といいます。

 一方、別の部署で働く同期の那美さんは、ほとんど残業もなく定時退社。平日の夜に習い事もして、プライベートを満喫している様子です。それでも、定額の残業手当は30時間分支給されるため、衣子さんは、「こんなに一生懸命働いているのに、割に合わない」と不満顔です。

残業続きの自分と、定時退社の同期。でも、給与は同じ?(写真はイメージ) (C) PIXTA
残業続きの自分と、定時退社の同期。でも、給与は同じ?(写真はイメージ) (C) PIXTA

 衣子さんの言い分は、みなさんもよく理解できるのではないでしょうか。こうした制度は、いったいどのような仕組みになっているのでしょうか。

 これは、「定額残業代」あるいは「固定残業代」などといわれ、一定の残業見合い分を手当として支給する給与体系の一つです。

 適切に制度が設計・運用されていれば、残業代を支払っているものとして適法です。企業側としては、人件費をあらかじめ予算化できるというメリットがあり、こうした制度が導入されている企業は数多く見受けられます。

 昨今は、未払い残業問題も大きく取り上げられることから、こうしたリスクを避けるために、固定残業時間のキャップを大きく取りたい、とする企業側の思惑もあるでしょう。しかし、それがかえって弊害となり得ることもあります。