通勤災害と認められるとどうなる?

 一般に、ケガや病気で治療のために病院へ行くと、医療費がかかります。保険証を提示しても、3割の自己負担は発生します。ところが、通勤災害と認められた場合、医療費や薬代が基本的にかかりません。さらに、通勤上の負傷により働けず給与が出ないときは、所得補償として休業4日目から「休業給付」を受けることもできます。もらえる額は特別支給金と合わせて給付基礎日額(1日当たりの平均賃金)の80%です。例えば、給付基礎日額が1万円の方が20日間、通勤災害による休業した場合、合計13万6000円が支給されます。

自宅以外の場所から通勤したときにケガをしたら?

 ところで、通勤災害でいう「住居」とは、労働者が居住して、日常生活をしている家屋等の場所を指し、本人が仕事をするための拠点になる所をいいます。通常は自宅となりますが、例えば自宅とは別にアパートを借りて、早出や深夜残業の際に通勤するようなケースも該当します。

 それでは、台風や大雪などで交通機関がマヒしてしまい、帰宅難民となってしまうようなケースはどうなるのでしょうか? 先日1月22日、首都圏は大雪に見舞われましたが、夕方以降の積雪が予想されていたため、早めの帰宅を促していた会社が多かったと思います。しかし、中には仕事があって早上がりできず、結果として自宅に帰れなかったという人もいたと聞きます。

 このように、台風や大雪といった自然現象などによる事情、または交通ストライキなどの事情のため、住居に戻ることが困難となり、一時的にホテルなどに泊まる場合もあるかもしれません。自宅以外の場所で宿泊し、翌日出勤する途中にケガをしてしまった場合、そのホテルを住居とみなして、通勤災害の対象となるケースがあります。また、ホテルが満室で予約が取れず、やむを得ず漫画喫茶やインターネットカフェで一夜を過ごした場合についても、対象となる可能性があります。

「結局、帰れなかったの。だから今、ホテル」 (C) PIXTA
「結局、帰れなかったの。だから今、ホテル」 (C) PIXTA

 ただし、大雪で交通事情が悪いとしても、帰ろうと思えば自宅に帰れるものの、大変そうだからと自己判断で近くの漫画喫茶に行くような場合や、会社に近いという理由で自宅に帰らず友人宅に宿泊するようなケースでは、その場所を住居とみなすのは難しいと言えます。

 通勤災害に関する判断は、ケースバイケース。実際の判断は、職場を管轄する労働基準監督署となります。自宅以外の場所から通勤する途中にケガをした場合は、まず会社に状況を説明した上で対応について相談しましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA