こんにちは、「ワークルールとお金の話」の佐佐木由美子です。この冬は大雪による被害が相次ぎ、多数のケガ人が出ました。通勤途中に雪や路面の凍結が原因でケガをするなど、通勤災害と認められるケースもありますが、帰宅難民となった場合はどうなるのでしょうか?

冬の日に多い通勤災害

 通勤災害という言葉を聞くと、通勤中の事故であれば、何でも対象になるようなイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 通勤災害における「通勤」とは、就業に関し、原則として住居と就業の場所との間の往復に際して、合理的な経路および方法により行うことをいい、業務の性質がある場合は除かれます。なお、就業の場所から他の就業の場所への移動や、単身赴任先の住居と帰省先住居との間の移動も含まれます。

 福島労働局は、福島県内で2015年度に通勤途中に起きたケガなどで通勤災害と認定した550件のうち、約3割の150件が雪や路面の凍結が原因だったと発表しました。このうち半数以上は徒歩で通勤途中に転倒しており、雪に慣れているはずの東北地方でも災害が多発しているのですから、大雪が珍しい首都圏ではさらにリスクが高いと言えるでしょう。

 この調査では、雪・凍結が原因による通勤災害の被災労働者は約7割が女性で、特に50代以降で女性の割合が高くなる傾向が確認されました。また、災害発生件数が高い時期は、雪による影響により12月から2月までの冬季に集中していることが分かりました。

雪の日の通勤は事故リスクが高まります (C) PIXTA
雪の日の通勤は事故リスクが高まります (C) PIXTA

 ただし、会社から自宅への帰宅途中に事故に遭ってしまうようなときでも、場合によっては通勤災害と認められないこともあります。それは、移動の経路を逸脱してしまったり、中断してしまったりした場合。逸脱とは、通勤の途中で仕事や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれてしまうことをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為をすることをいいます。ただ、通勤途中で駅のトイレを利用したり、駅の売店でジュースを購入したりするような些細な行為は、中断・逸脱とはなりません。

 例えば、仕事帰りに友人と飲みに行って、その後、家に戻る途中に起きた事故などは、通勤経路を外れてしまった時点から対象となりません。このように逸脱または中断の間と、その後の移動は通勤とはなりません。

 ただし、その逸脱や中断が日常生活上必要な行為で、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱または中断の間を除き、「通勤」となります。例えば、日用品の購入や病院で診察を受けたりするような場合です。