連載、「こんなとき、どうなる? 働き女子の法律相談所」は、みなさんの日々の暮らしの中での素朴な疑問、質問、相談などにお答えする働き女子のための法律相談所です。今回は面接の時に出身地や結婚、出産の計画について聞いてはいけないことがあると…聞いた女性からの相談です。この問題についてアディーレ法律相談所の岩沙好幸先生が答えてくれました。

Question

 現在転職活動中です。先日、とある企業で出身地や結婚、出産の計画について聞かれました。出身地に関しては、私の苗字が珍しかったために思わず聞いてしまった、というような感じでしたし、結婚については転勤や長期出張のある会社なので仕方ないかな、と思っていたのですが、友人にその話をすると「それらは聞いてはいけない質問だよ」と言われました。面接で聞いてはいけない質問があるということにも驚いたのですが、なぜ聞いてはいけないのか、出身地や結婚、出産以外にも聞いてはいけないことがあるのか教えてください。(30代・女性)

 Answer

 憲法上企業にはどのような人をどのような条件で雇用するかについて「採用の自由」が認められます。採用面接の場で企業が応募者にどのような質問をするのかも「採用の自由」に含まれます。ただし、憲法はすべての個人に対して基本的人権を保障していますので、個人の基本的人権を侵してまで企業の採用の自由は認められません。したがって、企業は、応募者の適性と能力のみを基準として採用を判断するべきであり、応募者の基本的人権を侵害するような質問はしてはならないということです。

 それでは、どのような質問が、基本的人権を侵害してしまうのでしょうか。法律および法律に基づく指針では、これから説明する様な応募者の個人情報を収集することは原則として認められませんので、これらにかかわる質問は原則してはならないと考えるべきでしょう。

(1)人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項

 例えば…

「あなたの本籍地はどこですか?」
 このような質問はかつて同和地区の人たちを排除するために用いられたと言われています。現在においても差別につながる可能性があり、応募者の平等権などを侵害する質問ですので認められないでしょう。

「あなたのお父さん(お母さん)は、どこの会社に勤めていますか?」
 このような質問は採用後、企業に損害を与えた場合の保証能力や家庭の生活程度を判断するためになされることがありますが、親の収入という自分ではどうしようもないことを理由に差別される可能性があり、平等権侵害・人権尊重といった観点から認められないでしょう。

「兄弟(姉妹)は何人ですか。両親はいますか?」
 家庭の状況を聞くことは、家庭の生活水準を判断したり、親のいない家庭の子供を排除したりするなど、本人ではどうしようもない理由で差別・人権侵害がなされることにつながる可能性がある質問なので認められないでしょう。

「彼氏(彼女)はいますか?」
 彼氏や彼女がいるかどうかを秘匿することは、プライバシー権の一環として憲法上保障されています。よって、このような質問は応募者のプライバシー権を侵害する行為として認められないでしょう。

「血液型・星座は何ですか?」
 血液型・星座と性格とは科学的根拠な裏付けのない職務能力とは無関係のものです。このような事情により採否が決められると不当な人権侵害や職業差別となりえます。よって、このような質問も認められないでしょう。

 その他にも、家族の収入、本人の資産等の情報等、差別的評価につながる情報なども原則として認められない質問となります。