連載、「こんなとき、どうなる? 働き女子の法律相談所」は、みなさんの日々の暮らしの中での素朴な疑問、質問、相談などにお答えする働き女子のための法律相談所です。今回は出張の合間に観光をしてはいけないのか、アディーレ法律相談所の岩沙好幸先生が答えてくれました。

Question

 先週、私は会社の出張で、大阪に月曜から金曜まで5日間行ってきました。そこで、得意先を回っていたのですが、どうしても少しずつ時間があいてしまい、せっかく大阪に来たので観光地に立ち寄り観光をしました。初めての大阪だったので、浮かれてSNSに上げてしまった私も悪かったのですが、それを上司に見られてしまい、「出張中に観光を楽しむなんて、けしからん! 観光に使ったであろう時間分として有給を半日分ひいておくから。」と激怒されてしまいました。しかし、行く予定であった営業先には、すべて回りましたし仕事自体はそつなくこなしました。こういった場合、出張中は同じ労働時間で働き、その中の休憩時間として観光するのはいけない事なのでしょうか。(30代・女性)


 Answer

 5日間の出張ということにもなりますと、観光の一つもしたくなってしまいますよね。たまにある出張は仕事の息抜きと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 まず、出張中も普段と同じ労働時間で働かなければならないか、についてですが出張であっても勤務に変わりはないため、通常の勤務と同様の労働時間を働く必要があります。なお、出張の往復の移動時間は労働時間とカウントできないケースが多いので、出張先の会社についてから、その会社を出るまでが出張中の1日の労働時間となるので覚えておいてください。

 次に、仕事で時間が空いてしまった場合についてですが、出張となると空き時間ができることもあるかと思います。

 出張とはいえ、適宜休憩をとることは必要なことですので、空いた時間に休憩をとることは問題ありません。もっとも、出張中とはいえ勤務であることには変わらないので私用のために時間を使うことは良いことではないですね。実際は、会社に把握されることは少ないでしょうし、仮にわかっても黙認されていることが多いと思いますが、私用のために時間を使うのは、勤務時間外だけにするようにしましょう。

 最後に、有給休暇は休んでも給料が引かれない休暇であることはご存知かと思います。有給休暇として認められるには、事前の申請が必要になります。今回のように会社側が後から一方的に残りの有給から半日削ることは認められていません。

 しかし、病欠した場合など、休んだ分に有給を事後的にあてることは会社と社員双方の合意があれば問題ありません。今回は双方の合意があるとは言い難いですよね。

 従いまして、出張中に観光をしたとしても有給を半日分減らすというようなことはできませんので、ずいぶん乱暴なことをする会社だと思います。出張中の観光を推奨するわけではありませんが、SNSへの投稿には注意して下さいね。

この人に聞きました
岩沙好幸
弁護士(東京弁護士会所属)
岩沙好幸(いわさ・よしゆき)

慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼い始めた。労働トラブルを解説した書籍『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)が発売中。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。

写真/tomos(PIXTA)

◆ご質問・ご相談をお待ちしています◆
「こんな場合はどうなんだろう?」と感じることはありませんか? 質問や相談がおありの方は、下のコメント欄からお寄せください。記事のテーマとして検討させていただきます(直接お答えすることはできかねますので、ご了承ください)